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感想「偽史冒険世界」

「偽史冒険世界」 長山靖生 ちくま文庫
明治以降に書かれたカルト本を紹介しつつ、そういうものが出現した背景を考察したもの。主に取り上げられているのは、義経・ジンギスカン同一人説と、日本・日本人の起源に関する様々な珍説。
珍説自体は、どこかで見聞きしたことがあるものが多いが、それらが出現した必要性・必然性についての考察が、かなり興味深かった。

義経・ジンギスカン同一人説の、始まりはともかく、広がった理由に、日本の領土的野心があったという解説には、なるほどと思った。最初は江戸時代の蝦夷地、その後は大陸。同じ民族の末裔が支配している土地だから、そこを吸収して連帯するのは当然という論理。国がそれを公然と広めた訳ではないから、世の中の心情的なものに過ぎなかったようではあるけれども、それが案外馬鹿にならないのも確かではある。
日本人ユダヤ人同祖説については、ユダヤ人の外見がどんな風か知るようになって、なんでこれで同祖なんてことがありえるんだ?と思っていたが、西欧文化へのねじれた形での憧れが根源ということと聞けば、まあ、そんな無茶もありえるんだろうな、という気はしてくる。
どっちかというと、少し考えれば無茶としか思えない珍説を、考え無しに簡単に信じ込んで広めてしまう人々の方に、問題はあるんだろう。今の世の中も、そういうのが大量に出回っている。ネットの影響で、今は昔よりもそういうのを簡単にばらまきやすい世界になってるだけに、たちが悪いとは言えるけど、今までだったら広げることが難しかった、本当に広げないといけない情報も広がるようになっているわけだから、それを一概に悪いとも言えない。結局、受取り手の努力が求められる時代なんだろう。

まとめの部分で、根底にあるのは理想主義という書き方を著者はしてるけど、どっちかというと大半は、自分たち(日本・日本人)を美化・正当化したいというのが動機と思われ、それ自体は「理想主義」という言葉の意味とは、ちょっと違うんじゃないかという気がする。ただ、開国以降、欧米に対抗したいという意識から、そういうものが生まれて来たというのは、分かるような気がするけども。

ヨコジュンの「古典コテン」からの影響が相当強いように見受けられ、ヨコジュンが趣味的に始めた日本古典SFの収集が、こういう所まで発展したんだなというのは、ちょっとした感動だった。

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