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感想「サクリファイス」

「サクリファイス」 近藤史恵 新潮文庫
家の中に転がっていて、プッシュもあったので、読んでみた。出た当時、結構評判になってた記憶はある。

自転車ロードレースの世界を舞台にしたミステリ。というか、ただの青春小説?と見せて、ミステリの要素が浮かび上がってくる手際が巧いと思った。背景になっているロードレースに、ミステリのプロットが重なってくるアイディアもいい。ロードレースの先行交代のルールで「サクリファイス」という言葉が浮かび、そこから言葉に噛み合うプロットを発想したんじゃないかという気がするが、きっちり書けているのが、大したもんだなと思う。
あとは単に好みの問題。こういう「サクリファイス」はあんまり好きじゃなく、その部分で感動を誘うような意図が著者にあるとしたら(少なくとも、そこに感動を見出す読者はいるはず)、ちょっと嫌らしい小説だと思う。ただ、これが「サクリファイス」ではなく、ある種の本人のエゴだったと考えるなら、石尾の人物像が俄然深みを増してくるように思える。元々意図されていたものなのか、ミステリのプロットが複雑化した副産物なのか、よく分からないけれども、石尾はかなり掴み難い人物に描かれているので、そういうこともあり得るのかも知れないと思った。ただ、タイトルが「サクリファイス」だからな。
そういう意味で、この小説を、単純に良かったとは言いにくい。

ロードレースにはほとんど興味がないし、競技用自転車も乗ったことはないけど、多少のサイクリング経験はあるから(初心者レベルにはそこそこキツい上り坂や下り坂を走ったこともある)、自転車で走っている時の感覚というのは、ある程度分かってると思ってるが、この小説にはそこの部分が、リアリティを持ってよく描かれていると感じた。作家本人はロードバイクに乗ったことがないそうで、本当に全く経験なく、取材だけで書いてるんだとしたら、大したもんだなと思った。

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