感想「二十世紀数学思想」
「二十世紀数学思想」 佐々木力 みすず書房
高度化・専門化した20世紀の数学を、一人で概観するのは不可能と言いつつ、特定のテーマに絞り込むことで、それを試みようとした本。
テーマは三つで、一つ目は1930年のゲッティンゲンでの数学者の会議を中心にした数学の基礎論について、二つ目は20世紀の代表的な数学者の一人のヘルマン・ワイルの思想の移り変わりについて、三つ目は原水爆などの大量破壊兵器を含むアメリカの軍事科学に大きな貢献をしたフォン・ノイマンを中心にした数学者の倫理の問題について。
読者がそれなりの知識を持っていることを前提に書かれた本なので、ある程度、こういう関係の本を読んではいるものの、大雑把な読み方しかしてない身には、正直、かなりキツかった。ただ、最初の二つのテーマについては、しばらく前に読んだ「数学10大論争」に通じる部分がかなりあって、だいぶ助けになった。というか本書は、「数学10大論争」を読んだ後、この関係で何か読むかと思って見つけた本だ。ただ、結局、漠然と分かったような分かってないような、というレベルに終ってしまい、今、「数学10大論争」を再読すればもう少し理解が深まるか、という気はするけども…まあいいや。
三つ目のテーマについては、要するに、科学者の倫理の問題を扱っているわけで、特に数学者に限定される話ではない。ただ、数学は実世界とは無縁のものと思われている所があって、数学者がそういう考察の対象にされることが少ないが、そんなことはないというようなことを言っていて、著者としてはそこがポイントのようだ。
全体としては客観的な観点から書こうとしているように見えるのだけど、そこここに著者自身の信念が覗いて、どうしてもぶれて行ってしまう感じで、なんとなく中途半端な印象を受けた。意図的なものなのかも知れないが。あと、文脈からするとかなり強引に、日本人の業績について触れようとする箇所が多かった点にも、ちょっと違和感。
この著者は、かなりあくの強い人物なのかも知れないという気がした。
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