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感想「虐殺器官」

「虐殺器官」 伊藤計劃 ハヤカワ文庫
初刊行当時、インパクトのあるタイトルだったので、書店で冒頭部分を眺めてみて、結構面白いかもしれないと思った記憶がある。ただ、文庫じゃないので高かったのと、国産SFは基本的にはサービスエリア外なので(^_^;)、パスしたんだな。今回、たまたま行った古本屋に文庫版があったので買ってみた。

これは凄い小説なんじゃないかと思った。SFとしてどうこうというのは、エリア外だからあまり言えない(先行作品のアイデアを、割とそのまま使ってるのかな、ということを思ったくらい。「バベル17」とかギブスンとか。他にもあるのかも知れないけど、知らないんで)。純粋に小説として凄いなと。
途上国を収奪した上に先進国ののどかな日常があるという現実を、近未来を舞台にすることで、より鮮明にして叩き付けてきているような感じ。SFで書くことで、それが可能になっている、だからSFなんだ、という面はあるんじゃないんだろうか、ということを思った。本当にそれが著者の意図したことだったのかどうかは知らないが、自分が受けた印象はそれ。
ディテールが丁寧に構築されているので、とてもリアリティのある近未来になっているし、それによって、メッセージ性が強烈に伝わってくる。死体や戦場のどぎつい描写はそこら中にあるが、内容がそれを必要としているので、嫌悪感を全く覚えない。というか、嫌悪感を覚えるような現実が存在するということを、改めて思い知らされるというか。
主人公の設定や文体、SF的なギミックへのこだわりが、内容の陰惨さをある程度、和らげているとはいえ、これはエンターテインメントじゃなくて、小説だなと思った。自分にとって、「面白い」という範囲ではない、違う次元の小説だったという感じ。
こんなに圧倒されるような気分で小説を読んでいたのは久し振りだった。
(2011.4.7)

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