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感想「国家の崩壊」

「国家の崩壊」 佐藤優+宮崎学 角川文庫
ペレストロイカからソ連解体までの流れを、宮崎学が設定したテーマに沿って、当時ソ連に外交官として駐在していた佐藤優が解説するもの。

佐藤優の該博な知識とネットワークの広さには感心させられるし、当時ソ連で起きていたあれこれについての深層解説は興味深い。
ソ連で起きた事態を、今の日本を考えるための材料にするというのが、この本の趣旨で、混乱状態の国の舵取りをする人間には、未来へのしっかりした展望が必要、リアリズムで物事を考えられない、キャッチフレーズだけの政治家ではダメで、ゴルバチョフがそうだったが、日本で彼に相当するのが小泉だ、という位置付け。ゴルバチョフはともかく、小泉についてはその通りだと思う。
ゴルバチョフに続いたエリツィンへの評価は高いが、日本の場合は小泉以降も、大半が似たようなキャッチフレーズ首相。しかも、世論がそういう奴を求めていることに問題がある、というのが宮崎学の問題提起で、政治に対するリアリティ感覚を国民が取り戻す必要がある、と言っている。この本の意図するのは、今のままでは、こんなふうに崩壊したソ連みたいになるぞ(エリツィンが居ないんだから、ソ連以下かも)、という警告なんだろうと思う。

ただ、そういう中心テーマは分かりやすいとはいえ、佐藤優が語るソ連・ロシアの実像が、一般的な日本人が持っている彼らへのイメージや、日本人の標準的な生活とは、かなりかけ離れているので、普通の読者にとっては、目新しさや違和感が先に立って、こんなふうにと言われても、あんまりリアリティを伴わないんじゃないだろうか、という気がする。宮崎学すら、どこか佐藤優と噛み合っていない印象を受ける。佐藤優は別の所に立っていて、彼の思いの本当のところは、この本ではあんまり見えてないんじゃないんだろうか。
そう感じるせいもあってか、この本の佐藤優は、あんまりカリスマ的ではないように思える。
(2012.1.10)

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