« ACLグループL第1節 名古屋対城南 | トップページ | 感想「エンジェル・シティ・ブルース」 »

感想「川は静かに流れ」

「川は静かに流れ」 ジョン・ハート ハヤカワミステリ文庫
家庭崩壊は文学の肥沃な土壌だとか、舞台にした街はほんとはこんなひどい所じゃないんだよ、とか、興醒めっぽい舞台裏の話が書かれた著者の前書きから入った割に、中身は悪くなかった。

殺人の嫌疑を掛けられて、無罪にはなったものの、追われるように街を出た主人公が帰って来ると、家族や友人に関わる暴力事件が起き始め、彼も巻きこまれていく、という話。こんなふうな筋書きは他でも読んだことあるな、とか、舞台になってる南部の田舎町も、割と既視感のある背景ではある。逆にそれが安心感につながっている気がする。きっちり立てたプロットに沿って、堅実に話を進めていくスタイルが、特異ではない背景によく馴染んでいる。殊更に感情移入したくなるような登場人物はいないが、現実味のある描かれ方をしているので、読んでいて違和感を感じることがない。
きっちり立てたプロットといっても、事件の謎解きとか、そういう部分ではなくて、様々な出来事を通して登場人物たちがどう変わっていくか、というような所に焦点が合っていて、そのせいか不思議なくらいミステリとしての印象が薄かった。思い返すと、筋立ては確かにミステリそのものなんだけど、主人公と周囲の人々との関わりを描いた部分の方が、圧倒的に印象が強い。
冒頭の方で、主人公が割と思わせぶりなことをするから、彼には何か裏があるのかもと考えたが、読んでいくうちにそういう話ではないな、という見当がついてきたし、彼の義母の行動がひどく奇妙なので、そこに何か仕掛けがあるのか?と思っていたが、結局なんてことはなかったし、ミステリらしいけれんみは今ひとつ。それが小説としての完成度や面白さを損なうことにはなっていないとは思うんだが、ミステリの傑作として持ち上げられるのはちょっとどうかな。

ちなみにMWA長編賞を取っているそうだ。まあ、そういう賞ではある。

原著は2007年刊、邦訳は2009年刊。
(2012.3.1)

|

« ACLグループL第1節 名古屋対城南 | トップページ | 感想「エンジェル・シティ・ブルース」 »

「小説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3787/54189276

この記事へのトラックバック一覧です: 感想「川は静かに流れ」:

« ACLグループL第1節 名古屋対城南 | トップページ | 感想「エンジェル・シティ・ブルース」 »