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感想「楊令伝」11

「楊令伝」11 北方謙三 集英社文庫
群雄割拠な状況を、それぞれの勢力の思惑を並行して描いていく形。その中で必ずしも梁山泊は特別な存在ではないという所が、「水滸伝」からの流れの中では新鮮に見える。ここから「岳飛伝」へはすんなり展開出来そうでもある。でも、そう簡単には岳飛は梁山泊を凌ぐ存在になれそうもないが。それとも、凌いだ上でというんじゃなく、なし崩し的に話の中心が、梁山泊から岳飛へ移行していくような形を取るのかな。

前の巻に、一時的にであっても、とりあえず平和が実現した状況に馴染めない、梁山泊軍のメンバーの話が出て来たが、今回も軍人には戦が必要というくだりがあって、それは「楊令伝」の根幹にも関わってくるテーマだと思う。軍事力が全く必要ないという状況を、現実に実現するのは確かに難しいとは思うし、多分、梁山泊も、そういう所までは踏み込んでいかないだろうけど(実際、この巻の終盤では、また戦いが始まってくる)、軍事力を持っていれば、それを仕事にしている人間が成果を挙げるためには戦いが必要だし、そのために無駄な戦いや過剰な武力行使が起きることは間違いなくあるので。そこをどう考えるか。

現実の話でも、太平洋戦争のある程度の部分はそれだったと思えるし。たとえば、現実主義を掲げて、憲法9条の戦争放棄を空想的と批判する(そういう批判が全く間違いだとは思わないが)人間は、逆にそういう部分の現実を見ようとしない傾向にあるよな。その辺の危うさが、9条擁護派との議論が噛み合わない原因のひとつだと思ってる。5/3が近い時期なので、そんなことも考えた。
(2012.4.30)

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