« 感想「楊令伝」11 | トップページ | セリーグ ヤクルト対広島(5/4) »

感想「陰謀史観」

「陰謀史観」 秦郁彦 新潮新書
主に日本の近代から現代にかけての陰謀史観について解説した本。日本はアメリカやら中国やらに騙されて、太平洋戦争に引きずり込まれたとか、そういう類のやつ。

本のタイトルを見て、もう少し広い範囲のトンデモ本を扱った本かと思って買ったんだが、まるっきり真面目な本だったので、やや期待と違っていた(^^;)。著者の名前をちゃんと見てれば、そういう方向の本じゃないのは分かったはず。ちょっと失敗。

陰謀史観てのは、要するに、自分たち(の国)は悪くなくて、悪いのはみんなよそのやつらという論理だな。自己正当化したがるのは人間の本能だろうけど、どうしてそこまで調子のいい考え方が出来るかなと思う。
ただ、そういう主張に乗っかってしまう人たちについては、色々めんどくさいことが多い世の中で、自分に直接責任がないことでは、耳当たりのいい話を聞いていたいと思う気持ちも分からんではないし、そういう需要があるからには、供給が行われるのも理にはかなっているかもしれない。

著者は陰謀史観の辻褄の合わない所、変な所を次々指摘していくけれど、こういう史観の信奉者は、間違いに見えるのも陰謀のせいだと思うだろうから、所詮、水掛け論になっちまうだろうな。
藤原正彦とか田母神俊雄はどうしようもないと、言動を見ていて感じているが、ある意味、彼らの本家みたいな江藤淳が、ここまで小さい人間だったとは知らなかった。もっとも、これはあくまでも著者の観点からの文章だから、江藤側の言い分が書かれた文章も読んで判断するのでないと、そこはフェアじゃないとは思う。

それにしても、所詮水掛け論にしかならんから、陰謀史観を信じてる人間には信じさせとけば?、と思わないでもないが、信じ込んでる者同士が、お互いを疑心暗鬼で見ていくうちに、火の無い所に煙が立つということもありうるわけだ。本書に書かれている、日本とアメリカの間で戦争は避けられないと煽る小説や論説の存在が、太平洋戦争が開戦に至った原因の一つだった可能性があるというのは、いかにもありそうなことに思える。だとすれば、陰謀史観みたいなものを放っておくのは有害なんだな。本書の帯に書かれている、「疑心が疑心を呼ぶ」という状態は、確かに危険。あまり露骨には書いてないが、その辺りが著者が本書で一番書きたかったことのようにも思える。全体的に内容にまとまりがないので分かりにくいが。

ただ、週刊新潮って、むしろそういう煽りばっか書いてる雑誌という認識なんだけど。そういう出版社からこういう新書が出るのは、よくわからないな。出版社というのは、同じ会社でも部門が違うと、考え方とか全然違ったりするらしいが。
(2012.4.30)

|

« 感想「楊令伝」11 | トップページ | セリーグ ヤクルト対広島(5/4) »

「小説以外の本」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3787/54627308

この記事へのトラックバック一覧です: 感想「陰謀史観」:

« 感想「楊令伝」11 | トップページ | セリーグ ヤクルト対広島(5/4) »