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感想「紐と十字架」

「紐と十字架」 イアン・ランキン ハヤカワミステリ文庫
エジンバラを舞台にした警察捜査小説。

シリーズものとはとても思えない主人公の、シリーズもの第一作。主人公の刑事は特異な過去は持ってるが、特に頭が切れたり、優れた能力を持ってるわけでもなく(基本的には有能な人物のようだけど)、本書の事件も、彼自身が関係者だったというだけで、解決のために特に目覚ましい活躍をしたわけでもない。と思ったら、解説に元々シリーズ作として構想されたものではないと書いてあった。そうだよなあ。この人物をシリーズものの主人公にするなんて、とても考えられない。
本書自体は、イギリスらしい暗くて地味な雰囲気ながら、話の展開がスムーズで必要以上に入り組んでいないし、エジンバラの雰囲気もよく描けているし、登場人物も癖はあるが、割と親しみやすい面々なので、面白く読めたけれど。
ただ、ジキルとハイドテーマの小説ということで、ジキル側とハイド側の人物像に共通点をほのめかすような記述が所々目立つ割に、最後の方ではそこは結構どうでもよくなって、普通の捜査小説に落ち着いてるような印象もなくはない。作家の方も、テーマを突き詰めようという強い気持ちは、それほどなかったのかな。ある程度書いた所で、シリーズ化も考えたキャラ重視の方向に小説の舵を切ったかも、という気はした。

描かれているSASの訓練てのが凄まじくて、にわかには信じ難く、こんな訓練を受けて、正常な精神で居られるとは思えないし、そんなねじれた人間が任務を果たすことを出来たんだろうかとも思う。もっとも、ある時期のイギリスが、少なくともアイルランドに関しては、かなり無茶苦茶なことをやっていたのは確かなようなので、そんなものなのかもしれない。
(2012.5.12)

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