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感想 「単一民族神話の起源」

「単一民族神話の起源」 小熊英二 新曜社
明治以来、日本人は単一民族だという考え方が広まった、と言われることが多いが、太平洋戦争前は台湾や朝鮮も含んで、単一民族国家ではありえなかったことを考えると、実際はどうなんだろうか、という所から始まって、日本人の起源に関する論説の流れを、明治以降、戦後までたどったもの。出だしの所を読んで、そういや確かにそうだな、考えもしなかったと思って、興味を引かれて読んでみた。

基本的には、やっぱり戦前は複合民族説が主流で、単一民族説は、国内に多民族の大集団が居なくなった戦後に勢力を増したものらしい。もっとも、複合民族と言っても、日本人は日本列島にやってきた複数の民族のいいとこ取りで成立した優れた民族、とか、元々、同じ民族なんだから、日本の領土に含めるのは当り前、とか、そういう都合のいい主張の論拠だったようだが。特に、太平洋戦争に向かっていくにつれて、そういう論理がまかり通ったようだ。単一民族説にしても、日本人の優秀さの論拠として使われるのが最大の用途という感じで、それがいろんな問題を引き起こしているわけだから、どっちがいいとか悪いとかの話ではないということが、よくわかる。
どっちにしても、日本人が他の民族よりも優れているという言い方をされている時、他の民族についての評価は、偏った固定観念の域を出てないように見えることがほとんどだ。

ちなみに戦前から戦中にかけては、日本の政府の公式見解としては朝鮮人は日本人と同じ民族で、混血も奨励されていたようだ。日本人の方が、同じ民族の中でもえらいので、混血することで、レベルを引き上げてやれる、というような立場からの奨励ではあったようだけどね。こんな考え方は、今は日本でもとても受け入れられないだろうけど(いろんな意味で)、そういう時代から100年も経ってないと思うと、「民族」という切り口で、いろんなものをまじめに議論するのが、ひどくばかばかしく感じられる。国の力関係やらなんやらで、「民族」の定義なんて、いくらでも変わる。

最終的に著者は、問題は単一民族か、複合民族かというようなことではなく、民族の起源を神話化して、それにすがることで、他者と向き合おうとしないことであり、大切なのは、神話にとらわれない努力をすることだとまとめている。それは同感出来る。

ちなみに、元々俺は「単一民族説」が嫌いだが、それは、単一民族だから、日本人の中では説明しなくてもわかる、的な言い方をする人間が、俺にはとても納得も理解もできないような主張をしてるのを見過ぎたからだ。そういう、説明しなくても相手に分かって当り前という考え方も、つまり他者と向き合わない姿勢ということだよな。
(2012.8.25)

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