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感想「北の言語 類型と歴史」

「北の言語 類型と歴史」 宮岡伯人・編 三省堂
北太平洋沿岸に分布する諸言語についての論文集。1992年の刊行。
もう少し、統一したテーマがあるかと思って読んでいたが、北太平洋沿岸の言語を扱ってる点以外は、共通要素はなかった。論文集で、本当に専門的なくだりは、研究者じゃない人間が読んでもあんまり意味が通じないと思えたので、適当に流しつつ読んでいた。
日本語やモンゴル語なども視野に入ってはいるが、基本的にはアジア側ではシベリア、アメリカ側ではアラスカからカリフォルニアに至る地域の原住民の言語がテーマ。大昔はベーリング海が陸続きで、人間が移動出来たから文化に繋がりがある、という漠然としたイメージを持っていて、そういう興味で読んでみた本だが、言語から見ると、著しく多様で、単純に括れるものでもないらしい。こんなに細かく分かれているのか、という感じ。ただ、やっぱり文化の連続性はあるんだな。言語そのものではなく、その辺について書かれている部分が特に興味深かった。元々、そういう関心もあって読んだことでもあるので。
今ある国の括りから離れて、地域として見ると、北太平洋は随分興味深い地形に見える。千島列島がカムチャツカに繋がって、そこからアリューシャン列島でアラスカまで繋がっていく。もっとも、戦前の日本は、これを見て、ひとつづつ島を占領していってアメリカへたどり着く、なんてことを考えていたんだが。アッツ島やキスカ島を占領したのもその一環(というほど単純な話ではないらしいが。先日読んだ「キスカ島 奇跡の撤退」で触れられていた)。
元々、基本的に話者の少ない(細かく分かれている分、さらに少ない)原住民の言葉が、英語やロシア語の圧力によって消滅に向かっているというくだりは、寂しい気分になる。
「抱合」という言語の現象が取り上げられいて、ひとつの単語にがどんどん接頭辞・接尾辞が付くことで、とても複雑な意味の一語の単語が形成されることを指すらしい。以前から、アメリカ原住民の言葉の翻訳で、一語でやたらと長い意味の説明が付いていることがあるのを時々見て、不思議に思ってたが、多分、この関係なんだな。ひとつ理解した。
本書の大きなテーマのひとつは、言語研究において、世界中にたくさんある言語のごく一部に過ぎないインドヨーロッパ語の存在が大き過ぎることに対する、別の方向からのアプローチという点にあるらしい。インドヨーロッパ語族の観点からは当たり前と思えることも、世界全体の言語の中では当たり前とは限らない。当然のことのようだけど、考え方の枠組みがそうなってしまっているから、無意識では気付かない。言語研究だけの話ではないなと理解した。

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