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感想 「「反原発」の不都合な真実」

「「反原発」の不都合な真実」 藤沢数希 新潮新書
原発推進派がどういう理屈で、原発の危険性を問題ないことにしてるのかを見てみようと思い、その時点でけっこう売れてるようだったこれを買ってみた。内容も網羅的で、新書だし、手頃に見えたので。まあ、この本が推進派の言い分の全てとは思わないが。

「不都合な真実」という煽り文句のタイトルだが、とりたてて目新しいことが書いてあるわけでもない。原発推進に有利なデータが並べられているが、そういうデータがあることは、元々承知しているし、その上で、原発は危険だと思ってる。ただ、すべての反原発の人がそうではないだろうから、この本を読んで考え直す人はいるだろう。
実際のところ、原発に関しては、今まで起きた事故での被害はこれくらいというデータは、あんまり意味がないと思う。違う場所で違う形で巨大事故が起きたら、過去の例とまるで違う新しい事態になる可能性が高いんじゃないだろうか。スリーマイルもチェルノブイリも福島もそうだった。そもそも本格的に稼動し始めて、50年も経っていない技術で、問題が出尽くしてるなんて考えにくい。
それから、どんな技術も危険はつきものという言い方を原発推進派はよく使うけれども、放射能のように、事故が発生した時の被害がとんでもなく長く続いて、対処のしようもない危険な技術には、その理屈は当てはまらないと思う。
この本でも、そういう部分に関しては、結局、事故が起きる可能性は非常に低いというのが前提になっている。万一起きたらということは考えない。というか、それ以前に、原発に代わる技術なんてないんだから、使わないとしょうがないというのが、大前提にあるので、考えるつもりがない(考えないことにしている)というところだ。やっぱり、そういうことなんだよな、と思った。

個人的には、そういう危険性がある以上、あとのことは(少なくとも長期的に考えれば)ほとんどどうでもよくて、とにかく原発は廃止する方向へ持っていくべきと思っているが、著者にとっては論点はそれ以外にも色々あって、そこで原発の利点を説くことにこそ、本書のポイントがある。完全にすれ違っている印象。ただ、ここで書かれている原発を動かさないことによるデメリットは、反原発の立場を取るにしても、了解はしておくべきだろうと思う。たとえば、原発を止めて電力が足りない分は、単純に火力で補えばいいというようなレベルでは、原発の事故の危険性を見ようとしない推進派と大して変わりはないと思う。反原発運動の中で時々聞く、原発止めても電気は足りてるという言い方に違和感を感じるのは、そういう理由だったりする。もうちょっと足元を固めないと、簡単に崩されてしまうと思うんだな。
(2012.9.20)

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