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感想 「さよならサイレントネイビー」

「さよならサイレントネイビー」 伊東乾 集英社
この著者が社会問題について書いた文章は時々見ていて、独自の視点を持ってる人という印象があるけども、かなり変わった経歴を持っていることが、今ひとつ、ピンと来ていなかった。本書の中で(それがテーマではないが)著者の半生に触れている部分がかなりあって、ようやくこの人の背景や経歴と、物事の考え方が繋がって見えて来た気がする。
この人は、世の中に対して自分にしか出来ないことがあると思っていて、使命感を持って活動してるんじゃないかという気がする。そういう熱っぽさのある文章を書く。実際、経歴を考えると、これだけ広い領域の知識や交流関係をベースにして、論じることが出来る人間が、そんなにいるとは思えない。

本書はこの人の最初の本で、テーマはオウム真理教。東大の同級生として親しかった人物が、オウム真理教に入り、地下鉄サリン事件の実行犯になっていたことを取っ掛かりに、オウム真理教がどういうものだったかということを論じる。その過程で、そういうものを必然的に生んでしまう今の日本の構造について考え、こうした事件を二度と起こさないためには、オウム真理教事件の実行犯となった当事者たちの経験を聞き取って、生かしていくことが必要と訴える。
実行犯に対しても、口をつぐんで言い訳せずに責任を取って死んでいく、という日本的な美風っぽい行動を取るのでなく、すべてのいきさつを語ることで、同じような事件への抑止力として欲しい、と語りかける(これが書名の由来。黙って責任を取るという習慣が昔のイギリス海軍にもあって、サイレントネイビーというのは、そこに由来する言葉だそうな)。
根本的には、起きてしまった問題について、事実関係や責任の所在をうやむやにしたまま、水に流して決着させてしまう日本的な流儀への異議で、だから、同じような失敗を繰り返してしまうと主張している(その最大の例が太平洋戦争なんだろうな)。本当にその通りだと思うよ。今回の総理大臣もその一例、でなきゃいいんだけどさ。

関連するテーマも、かなり掘り下げて書いている(というか、本論に厚みを持たせるために必要な掘り下げ)。特にマインドコントロールの絡みで、聴覚からの情報は意識する前に直接脳に働きかけるので、有効性が高いという話が強い印象。「虐殺器官」だね。で、音楽が心を動かすというのも、同じ作用のわけだ。
メディアの発達で、広範囲なマインドコントロールをやりやすくなっている今の時代に、誰かに都合がいいように操られないためには、そういうことにも自覚的でないといけないということなんだな。

かなり色々な内容を盛り込んだ分、構成は若干破綻してるように見えるが、主張にはとても力があると思った。
(2012.11.20)

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