« 感想「猛スピードで母は」 | トップページ | JFL第6節横河対YSCC »

感想「東京ダモイ」

「東京ダモイ」 鏑木蓮 講談社文庫
2006年の江戸川乱歩賞受賞作だそう。
舞鶴で起きたロシア女性の殺人事件に、60年前のシベリア抑留当時、抑留者の間で起きた殺人事件が絡んでくる話。
60年前の事件は、不可能犯罪の要素の強いもので、さすがに著者が乱歩を愛好しているだけのことはある、と思うんだが、背景にあるシベリア抑留や、それを受けた現代の事件の描き方に、とても厚みがあるので、そちらに寄りかかった小説にはなっていない。そうはいっても、過去の事件も話の中にうまく組み込まれていて、真相が現代の事件の解決にきっちり繋がってくるから、不可能犯罪ネタを強引に話に取り込んだ感じもない。
小説としての読ませ所は、やはり分量的に、シベリア抑留の非人道性とか抑留者たちの思いというあたりにあるんだろうけど、ここもミステリとしての枠組みを崩さない程度までは、メッセージ性の突出を抑えている。
登場人物の描き方は一面的でなく厚みがあるし、伏線も巧みに張っているし、ひとつひとつの要素のレベルが高い上に、よくバランスも取れている小説。
最初に凶器のアイディアがあって、それが成り立つ条件を探して、シベリアに行き着いたんじゃないかと想像するんだけど、だとしても、そこからこれだけの話を書き上げる手腕は、大したもんだと思う。
(2013.4.9)

|

« 感想「猛スピードで母は」 | トップページ | JFL第6節横河対YSCC »

「小説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3787/57168983

この記事へのトラックバック一覧です: 感想「東京ダモイ」:

« 感想「猛スピードで母は」 | トップページ | JFL第6節横河対YSCC »