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感想「差別語から入る言語学入門」

「差別語から入る言語学入門」 田中克彦 ちくま学芸文庫
引きの強いタイトルだけど(ある意味、それで読む気になったという所がある。田中克彦だし、というのもあったけど)、言語学者が差別語について論じる、くらいに考えて、そんなに間違ってないと思う。論じる過程で当然言語学のいろんな要素が出て来るわけだけど、そんなに学問的な方向には行かない。差別語というのはどういうものかというのを、普通の生活の中で考えていく。
常識的な(と思われる)考え方から外した論理の展開があちこちにあって、楽しませてくれるし、考えさせられる。そもそも、差別語糾弾運動への言及から本書は始まるんだけど、その評価は、言語エリートに対する一般の話し手からの異議申し立てとして肯定的に捉えるという位置付けで、そういう考え方もあるんだなと思わされたし。
当然、差別語が良い悪いみたいな単純な話ではなく、短くまとめちゃえば、特定の言葉がどういう過程で差別語と見なされるようになったかというような、背景や理由をきっちり考えよう、ということだと思う。それを考えることでいろいろなものが見えてくるし、よりよい日本語を作ることにもつながるという。
ちなみに著者は、言葉は言語エリートではなく、一般の話し手のものという信念だから、難しい漢字や敬語には否定的。そもそもこれらは差別を作る道具と考えるわけだ。根拠も明らかにしていない、日本語は美しい、的な言い回しに反発を示すのは、それが「考えない」物言いだからだろう。ちゃんと考えたら、そもそも安直にそんなことを言えるわけがないはずで。一貫している。
で、考えるということは、結局、抑圧と戦うということなんだよな。何も考えずに言うことを聞け、というのが、要するに抑圧なんだから。そこで楽して何も考えずに済ますんなら、何をされてもしょうがない。それが嫌なら考えなきゃ(嫌だから考えよう)、という思想が根底にあると思うし、それはとても共感できる。
(2013.3.28)

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