« 感想「日本を決定した百年」 | トップページ | 感想「いまだ人間を幸福にしない日本というシステム」 »

感想「死刑」

「死刑」 森達也 朝日出版社
森達也の本は、ひところはよく読んでたが、しばらくごぶさたしていた。なんとなく煮え切らないスタイルを、なんとなくめんどくさく感じるようになったからだと思う。どうしてもそうなるような(白黒つかない)テーマばかり取り上げているわけだから、ちゃんとテーマに向かい合ってる結果として、そうなってるということではあるんだろうが。
久しぶりに読んだ本書もやっぱりそういう後味。基本的には死刑廃止派の著者が、死刑存置派(そういう言い方をするらしい)も含めて、いろんな人の話を聞きながら、あれこれ迷いながら、死刑について考えていく。「ロードムービー」という形容をしてるが、確かにそういう雰囲気がある。最後の所では、結論のようなものを述べて、廃止派の立場を確認してはいるものの、振り出しの所から、それほど遠くまで来ているようにも思えない。
ただ、死刑ってのは、やっぱりそういうテーマだとは思う。
俺は基本的に死刑廃止派で、主な理由は冤罪は避けられないと考えるから。ただ、絶対に冤罪ではありえない犯人というのも確かにいる。そうはいっても、じゃあ誰が冤罪ではありえないかどうかの線を引く?、という所で、暗礁に乗り上げるから、である以上は死刑は廃止するべき、と考えている。この考え方には、なんとなく、正面から向き合わずに逃げてるような疚しさがあると思ってはいるが、そういうことで悩まなくても、他に悩むことは日常の中に沢山あるし、ある程度割り切れることは割り切らないと、と思ってもいる。ある意味、そういうことを代わりに悩んでくれるのが、こういう人たちなのかなという気がする。

とりあえずこの本を読んで、俺の死刑に対する考え方は変わらなかった。むしろ、冤罪がこんなに簡単に起きてしまうということや、死刑が人を殺すという重みを失って、単なる事務手続きの一環として扱われている寒々しさなんかを読むと、今まで以上に、ありえないと思えてきた。何でも事務処理のレベルに落とし込んで、人間的な要素を消してしまうのが、官僚的ということなんだろう。原発に関して起きているいろんなおかしいことにもよく似ているように思える。
(2013.7.9)

|

« 感想「日本を決定した百年」 | トップページ | 感想「いまだ人間を幸福にしない日本というシステム」 »

「小説以外の本」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3787/58038114

この記事へのトラックバック一覧です: 感想「死刑」:

« 感想「日本を決定した百年」 | トップページ | 感想「いまだ人間を幸福にしない日本というシステム」 »