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感想「変わらざるもの」

「変わらざるもの」 フィリップ・カー PHP文芸文庫
復活したベルンハルト・グンターもの。最初の3部作は全部読んでいるので、読んでみた。ただ、例によって、あんまり内容は覚えてないが。
第二次世界大戦が終わって、荒廃したドイツで私立探偵を再開したグンターが、元ナチスの消息を調べる依頼を受けて調査をしているうちに、何かに巻き込まれて酷い目に合わされる話。
背景が特殊とはいえ、私立探偵小説にはよくあるパターンだよなと思って、軽く読んでたら、終盤に来て、結構大掛かりなプロットが仕組まれてことが分かった。ちょっと感心した。確かに、この作家がそんなにありきたりの小説を書くはずはなかったか。そういう意識はないわけじゃなかったんだけど、伏線を張りまくったプロットというのとは、違う方向に突出した小説かと思っていた。なんかあちこちに妙な部分がある、と思ってはいたんだが。

もちろん背景が背景だし、戦時中に起きた非人間的な様々な出来事への言及も多いし、プロット自体もナチスやその他の陰謀に絡んでいたりするので、そういう出来事や状況に対してどう考えるかというのが、テーマとしてずっと流れている。そんなに軽い話ではないし、考えさせられる部分も多い。

ただ、以前の3部作を読んでた時も思ったことだが、イギリス人の著者がドイツ人の主人公の一人称でこれを書いてることについて、どの程度のリアリティがあるんだろうか、という気分は付きまとった。著者はドイツを専門に研究したこともある人だから、素人ではないが、たとえばグンターの言うことを、(異端的かもしれないとしても)ドイツ人ならそう考えてもおかしくないと、受け取っていいのかどうか、とか。深刻なテーマを扱っているだけに、なおさらそういう違和感がつのる。
実際のところは、若い一般的なドイツ人とかより著者の方が、よっぽど当時のドイツ人のことを理解してたりするのかもしれないけど。

でも、たとえば、アメリカ人が日本人を主人公に立てて、太平洋戦争後の日本を題材にした小説を書いたとして、それをどこまでリアルなものとして読めるかと考えると、ちょっと難しい気がする、と思うんだよな。双方の文化の距離の近さを考えると、そこまで単純な比較は妥当ではないのかもしれないが。

ミステリとしてはよく出来てると思う。
(2013.8.30)

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