« 感想「若者よ、マルクスを読もう」 | トップページ | 東日本トップクラブリーグ決勝神奈川タマリバ対北海道バーバリアンズ »

感想「亡びゆく言語を話す最後の人々」

「亡びゆく言語を話す最後の人々」 K・デイヴィッド・ハリソン 原書房
タイトル通りの内容。著者の言語学者が、世界中のそういう人たちを訪ねて、滅びかけている言語を記録してきた活動や、当事者たちの言語を生き延びさせようと行っている取組みを紹介している。結果として、世界のいろいろな少数民族の文化を紹介する本にもなっている。

言語はただの意思疎通の手段ではなく、その言語を使っている民族固有の知識や文化が含まれているから、言語が滅びるということは、そういうものまで、丸ごとなくなってしまうこと。だから、守っていかないといけないというのが、著者の主張。なぜ、そういう文化を守らないといけないかと言えば、そこにはまだ外の人間には知られていない重要な情報が含まれている可能性がある、というんだけど、そこは(事実だとは思うが)、若干後付けぽい気配を感じなくもない。
ちっぽけな地域の「遅れた」文化なんて保存する値打ちはない、という考え方をする人間はかなり多いと思われるし、それが国家による少数民族や被支配民族への同化政策の基盤でもあると思う。そういう人間に、保存の意味を訴えるには、こういう理由付けがいくらか有効なようには思える。
でも、本当に保存が必要な理由は、当事者の自身の文化への思いがあるからだと思うけれどね。そういう意味では、外の文化からの干渉とは無関係に、当事者たちが自主的に、なくしてしまおうと考えている言語なら、それを残そうとするのは、むしろ不自然な行為かもしれない。そういう事例は、まずないんじゃないかと思うけれども、英語教育に異常に熱心な一部の日本人を見てると、そうでもないかもしれない、という気もする。彼らは日本の文化が滅びてもいいと思ってるのかね。それとも、そこまで大きな問題ではないと考えているのか。
もう一つ思うのは、同化圧力に耐えられないとか、そういうことではなく、その言語自体にネガティブな要素があって、自分の言語に耐え難いものを感じているとしたら、それを強制することは出来ないんじゃないかということ。それこそ単なる意思疎通の手段だとしたら、言語そのものにそういうことを感じる可能性はかなり低いと思うけれども、文化と一体になった言語という考え方をすると、いくらか話は違ってきそう。たとえばの話、結構ありそうな気がするんだけど、何らかの差別文化が言語の体型の根本にあって、それを抜きにしては言語が成り立たなくて、話者がそれに耐えられなかったら? 広く流通している言語なら、言語自体が変化することで話者の意識に追従していくだろうけど(実際にそういうことは日々起きていると思う)、そこまでの体力のない言語はどうなるのかな。

ただ、そういう留保付きではあるけれど、基本的にはこの著者の考え方には共感できる。
要するにマイノリティの文化をどう守っていくかという話になると思う。ちなみに、この本を読んでて思ったのは、日本の文化って、やっぱりマイノリティの側にあるということ。この本自体はアメリカの学者が書いたものだから、(明らかにマジョリティの側にある)英語視点なわけで、いろいろな言語の特異性を述べているが、当然英語が基準。でも日本を基準に考えると、それはそんなに特異な言い方、文化には見えないんじゃないかというのが、結構あちこちにあるんだよな。一億人も人口が居て、そういう中だけで暮らしていると、あまり実感が伴わないんだけど、日本での言語教育を考えるには、自分たちはマイノリティだという視点は必要なんじゃないかと思う。
もう一つ、さらにもう一段階下の日本の中の言語の多様性のことを考えた。本来は日本の中に多様な言語があったのが、明治時代以降に強烈な同化圧力がかかって、方言扱いのレベルまで引きずりおろされたと考えるのが、本当は妥当なんじゃないかと思う。そういう認識が一般的になれば、この国の、マイノリティに対する冷酷な姿勢も、少しは改善するんじゃないかと思ってみたりする。
(2013.11.16)

|

« 感想「若者よ、マルクスを読もう」 | トップページ | 東日本トップクラブリーグ決勝神奈川タマリバ対北海道バーバリアンズ »

「小説以外の本」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3787/58588730

この記事へのトラックバック一覧です: 感想「亡びゆく言語を話す最後の人々」:

« 感想「若者よ、マルクスを読もう」 | トップページ | 東日本トップクラブリーグ決勝神奈川タマリバ対北海道バーバリアンズ »