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感想「日本凡人伝」

「日本凡人伝」 猪瀬直樹 新潮文庫
時の人の本。今回の一連の事件で猪瀬について書かれた文章で、過去の栄光(^^;)のこの本に言及してるのを2つ3つ見た矢先に、古本屋で安く出てるのを見かけたので読んでみた。元は1983年に出た本らしい。
「普通のサラリーマン」12人へのインタビュー集。時代の空気が伝わってきて、結構面白かった。特殊な立場の著名人じゃなくて、「普通の」人間へのインタビューだから、という面はあるだろうと思う。
こういうインタビュー自体は、今の感覚では、それほど珍しくもない、という気がするんだけど、巻末の対談や解説を見ると、この本が出た時点では、これが先駆けみたいなものだったようなニュアンス。だとすれば、こういうインタビュー集を着想したのも、猪瀬の才気のうちということになるのか。
ただ、ちょっと気になるのは、「普通のサラリーマン」とあるけれど、俺の感覚からすると、いや、それ、「普通」「凡人」じゃないんじゃない?ってのがインタビュー相手の半分以上を占める。「普通」って、どういうの?とか、記号的な「普通の人間」なんていないのかもしれないとかいう、ちょっと思想的なことも考えるべきかもしれないけれど、まるっきりのヒラ社員とか、現場の作業員とか、そういう本当に多数派のはずの層がまるで抜け落ちてるのは、「普通」を言うなら、やっぱりおかしいんじゃないか。そういう層が目に入ってなかったんだとしたら、彼の「普通」の感覚なんて知れてるし(今回の事件でよく分かったことかもしれないけど)、面白い話が聞けそうもないんで意図的に外したというんなら、普通の人って凄く面白いと思うようになってきた、とかなんとかいう巻末の対談での言い草は、お笑いだ。
もちろん、ここに出てくる12人の人生がなかなかドラマチックなのは確かで、それは猪瀬自身も書いてるが、変化の多い高度経済成長をくぐってきた人たちだからだろうと思う。あと、大半の人は、戦争もバックグラウンドにある。
そういう意味では、今、同じような企画をしたとしても、ずっと変化に乏しいものになるかもしれないな、という気はする。まあ、それこそ取材対象にはよるんだろうけれど、「サラリーマン」ということで言えば、多分、昔よりずっと変化の乏しい、保守的な存在になってるんじゃないかと思う。自分自身も顧みて。
(201312.26)

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