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感想「シルフ警視と宇宙の謎」

「シルフ警視と宇宙の謎」 ユーリ・ツェー 早川書房
2007年に出たドイツの哲学的?ミステリ。邦訳2009年。
パラレルワールドを研究する理論物理学者が、子供を誘拐されて、殺人を強要される話。
主人公のそういう属性がポイントで、主人公と、かつてはその親友だった天才的な理論物理学者との、パラレルワールドという概念に対する論争が、小説の大きなテーマになっている。絶えず枝分かれしていく無限の世界が並行して存在していて、人間は自分の未来を選ぶことで新しい分岐を発生させていく、というような考え方を主人公は主張して、それに対して元親友が反論を投げかける。その議論が理論物理学で装飾されている。
実を言えば、そういう装飾を取っ払った小説の筋立て自体は、そんなに特別なものじゃない。こんなことになるはずじゃなかった、というような、悲劇性は際立っているけれど。
でもって、パラレルワールドの思想を持っているもんだから、これは自分が選び取った世界なんだと考えて、主人公は自分を追い詰めてしまうんだが、哲学的な思索をするシルフ警視が、そういう主人公に自分に通じるものを感じて、救おうとするという話になっていく。もっとも、タイトルは「シルフ警視」だから、主人公は警視の方かもしれないが。
装飾を装飾と思ってしまうと、こけおどしっぽい小説だな、という感想になってしまいそう(ただし、それなりによく出来ているとは思う)。人間ってのはどういう存在なの?、みたいな方向に進むのであれば、それなりに含蓄に富む小説かもしれない。著者の意図としては、後者なんだろうが。
(2013.12.1)

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