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感想「ダールグレン」

「ダールグレン」 サミュエル・R・ディレイニー 国書刊行会
だいぶ前に買ったきり放置状態だったのを、一念発起して読んだ。先日読んだ「地獄のアメリカ観光」に言及があったのがキッカケ。キッカケがあって良かった(^^;)。

2段組のハードカバー2分冊の上に分厚いし、難解と聞いてたような気もしたので、なかなか手が出なかったんだけど、読んでみたら、実はそんなに読みにくくはなかった。そういえば、確かに読みにくかったディレイニーの小説って、改めて考えると、案外思い当たらないかも。
何かの事件によって荒廃して孤立したアメリカの架空の大都市ベローナが舞台で、そこでは、ありえないような謎めいた出来事がいろいろ起きる。そういう状況の中での生活を描いたもの。ただ、背景になっている時代は、多分、この小説が書かれた当時(1975年の刊行だから、そのしばらく前)の現代で、あの時代のアメリカでドロップアウトした人間のコミュニティーだったら、こんなもんかもね?、というような雰囲気があるので、シチュエーションの割には、あんまりSFを読んでるという気がしなかった。最後の章を除いたら、幻想味は強いが、若干風変わりな青春小説、という程度の印象。
最終章に来て、断片的な文章が積み重ねられた構造になって、いきなり実験小説ぽくなるけど、それもなんとなく、そこまで普通の小説らしく書いてきたけど、そろそろ飽きてきたし疲れたし、書く気になった部分だけ書いて、間は埋めずに並べてみた、なんてことなんでは?、と邪推(^^;)。それは冗談だけど、そうであっても不思議はない、という気はした。何かちゃんとした意味はあるのかもしれないけれども、分からないんで。
常識や良識に対する挑発的な場面の多さとか、言葉への主人公のこだわりの強さとか、その他にもいろいろなテーマ(たとえば芸術とか宗教とか)が見えていて、考え所はいろいろある小説だから、純文学の括りで特別な位置付けをされていたら、傑作かどうかはともかく、そうかもしれないな、と思うかもしれないが、「傑作SF」と言われると、どうなんだろうなと思ってしまう。これも要するに、あんまりSFを読んでるという気がしなかったからだ。その辺は結局、SFって何?という所に行っちゃうんだろうけど。
思ってたより読める本だったけど、感銘を受けたかというと、そんなには。「地獄のアメリカ観光」で、柳下毅一郎が最初と最後だけ読めば十分、とか言ってたが、俺のレベル(本書を理解するための知識の持ち合わせとか、時代感覚とか、その辺)では、まあそんなものかもしれない。主人公が片足だけ靴を履いてたりとか、何かの象徴だったり、隠喩だったりするんじゃないかなと思う部分が、いくらでもあるんだけど、そういうのも全く分からないから、どうしようもない。
(2013.12.19)

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