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感想「奥さまは愛国」

「奥さまは愛国」 北原みのり、朴順梨 河出書房新社
しばらく前に読んだけど、考えがまとまらなくて、ほったらかしていた。

過激な右翼的行動に参加する女性たちに、反対側の立場にいる著者たちが取材した本。
相当難しい取材だっただろうと思うし、本当に運動の中心に居るような相手には直接アクセス出来ていないように思えるので、内容には多少歯がゆさがある。それでも、少なくともある程度までは彼らの考えてることは見えてくるし、それはそんなに理解不能なものでもない。そこから過激な行動へ一気に行ってしまう飛躍に、違和感を感じないでもないけど、考えている状態から行動への一足飛びの飛躍ってのも、こういう行動に限ったことではないわ。もっとも、この飛躍のきっかけが何なのかというのが、本当に知りたいことではあるのだけど。

結局、これも何を信じるかというだけのことなんだと思う。人は見たいものを見るし、それが本当かどうかはそんなに重要じゃない。だから、既に思い込んでしまっている人間の考え方は、容易なことでは変わらない。
そうすると、重要なのは思い込まない、思い込ませないということなんだろう、と考えたりする。もちろん、こういう運動に限ったことではなく。
でも、それに対する対策は、結局、根拠のないおかしな宣伝や変な考え方への誘導を黙認しないという、ごく当たり前な所に行き着くしかないような気はする。

そういう一般論とは別に、個別に書かれている中で、一番印象に残ったのが、主に共著者の一方のフェミニズムの方の人(北原みのり)が、そっちの観点から書いているいくつかの事柄。
右翼的な運動は、女性を抑圧する家父長的な性格が非常に強いんだが、そういう中に女性が居る理由を考えている。完全にフェミニズムの話になってしまうと、男が考えて分かる領域ではないような気がするが、キーワードが過剰適応と同調圧力じゃないかと考えれば、フェミニズムの外で考えることも出来る。
個人に同調を強いる社会と、強いられて過剰に適応してしまう個人という、日本の諸悪の根源みたいな構図が見えてくるように思えるし、この国が住みにくい国にならんように、そういう構図の拡大を封じ込めて、むしろ小さくしていくのがやるべきことなんだな、とも考えられる。
でも、そういう読み替えは、著者の意図とは違っている気はするけど。本書のテーマは、あくまでも「女性」だと思うので。

もうひとつ、そういうことなのかなと分かったような気がしたのが、「弱さ」を見せる相手を彼らが非常に嫌うというくだり。ネットを見てると、弱者をヒステリックに叩く人間を時々見かけるし、なぜなんだろうと思っていたけれども、結局、あれも同調圧力なのかもしれないと思った。自分たちは辛抱出来ていることを、なぜ辛抱出来ないんだという感覚。そして自分たちに同調しない「出る杭」を叩くんだね。そんな風に思えた。
(2014.5.1)

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