« 感想「ア・ロング・ウェイ・ダウン」 | トップページ | 感想「九月、東京の路上で」 »

感想「ジェノサイドの丘」

「ジェノサイドの丘」 フィリップ・ゴーレイヴィッチ WAVE出版
90年代半ばにルワンダで起きたジェノサイドについて書いた本。混血が進んで既に区別が怪しくなっていたにもかかわらず、植民地時代に支配の都合上、ベルギーによってはっきり再分割された2つの民族の一方(フツ)が他方(ツチ)を大量虐殺した。「ホテル・ルワンダ」が話題になったりしたので、虐殺自体は日本でも今は割と知られてる話だと思うけど、事態が進行している時は、日本だけでなく、その地域の外では、ほとんど知られていなかったらしい(もちろん俺も知らなかった)。
その上、虐殺自体、凄惨な出来事なんだけれども、国連を始めとした国際機関が介入していれば、早い段階でそれを止めることが出来たのにしなかった、それどころか、虐殺を行っている側に加担したという衝撃的な話もある。フランスは自国の利益のためにそういう風に動き、他の国は多分に、ルワンダのことなんか知ったこっちゃなかったので、適当な対処で済ませていたということらしい。

正直言って、このことが当時、日本で知られてなくて、何の対応も取られなかったということ自体は(当時の国連高等難民弁務官が緒方貞子で、国連がまともな対応をしなかったことの責任の一部は、この人にあるらしい、としても)、気は咎めるけど、ある程度は仕方ないことに思える。いろんな意味で日本からルワンダは遠すぎる。今ならもう少し近いかもしれないけど、90年代半ばでは。

でも、今、この出来事から教訓を学び取るとか、同じような事態が起きないように備えることは出来る。特に「死ね」「殺せ」みたいなヘイトスピーチ(一部の週刊誌や嫌*本も同類)が大手を振って流通している今のこの国では、むしろやらないといかんことだと思う。そういうスピーチが日常的に流れて、「普通の人」に当たり前のように受け取られるようになってしまったら、ジェノサイドまではあと一歩だろうし、そういう状況になるのを防ぐのが、ヘイトスピーチに対するカウンターの意味だとも思う。それに関しては、帯に書かれている言葉のように、知らないことは「恥」どころか「罪」にあたると思う。

それにしても、当時、ザイール・コンゴで動乱が起きているのが報じられていたのは覚えてるが、あれがルワンダのジェノサイドと一続きの出来事だったこととか、先行して起きていたウガンダの政権交代もルワンダと深く関わりがあったとか、そんなことは何も知らなかった。知ってても、何も違いはなかっただろうけど、もう少しはアフリカのことを、知っておくべきかもしれないとは思った。
たとえば、コンゴ民主共和国で産出されるタンタルの材料について、使用を控えるという国際的な流れがあったりするが、あの辺の国の背景が分かっていれば、そういうことの受け止め方も違ってくるはず、とか、そんなことも考える。
(2014.5.14)

|

« 感想「ア・ロング・ウェイ・ダウン」 | トップページ | 感想「九月、東京の路上で」 »

「小説以外の本」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3787/59701690

この記事へのトラックバック一覧です: 感想「ジェノサイドの丘」:

« 感想「ア・ロング・ウェイ・ダウン」 | トップページ | 感想「九月、東京の路上で」 »