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感想「北京から来た男」

「北京から来た男」 ヘニング・マンケル 東京創元社
非シリーズもの。スウェーデン北部で起きた大量虐殺事件から話が始まる。ふとしたことで、この事件に関わりを持った女性裁判官の行動を描いてくのが主筋だが、並行して事件の背景にある150年前の中国人兄弟の悲惨な体験とか、現代の中国での権力者たちの暗闘なども語られていく。主人公の女性裁判官も、文化大革命の時代に毛沢東に心酔していた過去を持っているし、つまりテーマは中国。
大半の国民が悲惨な生活を送っていた時代から、とりあえず一部の人間はレベルの上がった生活を送れるようになった現代を経て、極端な格差社会化が進行する中国はどこへ向かうのか、というあたりの話がカギになっている。
ここで書かれてる中国の「陰謀」が、どの程度、リアリティがあるものなのかは分からないが、どっちかというと著者は、そういう「陰謀」を描くことを通して、権力が民衆を蹂躙するということを書きたいんだろうと思う。150年前の中国人兄弟のエピソードもそこに繋がっている。
もうひとつのテーマと思えるのは、白人による中国人の蔑視、中国人によるアフリカ人の蔑視といった、人種差別の醜さについての訴えかけ。
そうしたことがあってはいけないというメッセージには力があって、日本の状況も他人事ではないし、と思ったりするし、考えさせられもする。この辺が、この作家の持ち味。

ただ、そういう所から離れてみると、小説としては、犯人がこんな残虐な大量殺人をしなけりゃいけない必然性がいまいち見えない。一応説明はされているが、突き詰めると結局、異常な人物の異常な行為という所に行き着いてしまうような気がする。ショッキングな事件で読者を引っ張り込んでおきながら、うまく解決を付けられていない感がある。これは、この作家の小説には割とよくある欠点、とも思ってるんだけど、北欧ミステリには全体としてそういう傾向があるような気もしないではないな。

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