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感想「太陽に向かえ」

「太陽に向かえ」 ジェイムズ・リー・バーク 論創社
この作家の小説が、また邦訳されるとは思いもしなかった。さすが論創社。偶然本屋で見つけて、速攻で買った。

1970年に出た初期作だそうで、あまり手の込んだプロットでない所にそれっぽさを感じる。というか、ミステリというより、青春小説のようではある。ケンタッキーの炭坑町のプアホワイトの家で生まれ育った青年が、炭坑を経営する企業と労働者の暴力的な闘争に巻き込まれていく話。
主人公が暮らしている環境が、本当に悲惨。仕事はないし、あってもひどく低い条件だし、炭坑で事故に遭って障害者になっても満足な補償もなく、ろくなものも食えず、教育も受けられない。1960年代の話だけど、アメリカでは、まるっきり昔話でもないんだろうとか、日本でもそういう層が拡大しているらしい(格差社会だし、今や子供の約6人に1人が貧困状態だそうだし)とか、そういうことを考えると、とても、ただのフィクションとは割り切れなくて、読んでいて、かなりしんどい。そういう不公正な社会への怒りを感じさせる小説でもある。
他人の言うことを聞かない一本気な主人公(その辺は、多分に、後年のシリーズキャラクターのロビショーを思わせる)の心の激しい揺れ動きがよく描かれているし、この作家の持ち味の情緒的な文章や、風景描写の細やかさもあり、初期作といっても、この作家の小説ということで期待する内容は、十分にあったと思う。
(2014.11.5)

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