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感想「黒い蘭」

「黒い蘭」 レックス・スタウト 論創社
ネロ・ウルフものの中篇集で3篇収録(収録作は独自の選定)。おまけで「ネロ・ウルフはなぜ蘭が好きか」も収録されている。
本国では中篇集は沢山出てるが、日本では初めてのはず。この後、論創社からはあと2冊出るらしい。基本的には、ウルフものは中篇の方が面白いから、これはいい企画だと思う。後続も期待。
ちなみに3篇とも既読のはずだけど、例によって、たいがい忘れていたので、十分楽しめた。

最初は「黒い蘭」(Black Orchids)。ウルフがあくどい手を使って貴重な黒い蘭を巻き上げる、いかにもウルフらしい場面は覚えていたけど、それ以外はほとんど忘れていた。
蘭や園芸の知識を存分に使って書かれた作品。終盤の毒ガスのくだりは、いつかこの手を使ってやろうと思ってたんだろうなという気がする。黒い蘭見たさ、欲しさでジタバタするウルフの錯乱ぶりが楽しい。
ジョニー・キームズが出ていて、例によって、あまり良い風には描かれてないが、結果的には彼がローズを連れてきたのが事件解決に繋がったんだから、この扱いはちょっと気の毒かなと。

次が「献花無用」(Omit Flowers)。この事件では依頼人になるマルコが大騒ぎする場面は覚えていた。多分、かなり早い時期に「我が屍を乗り越えよ」を読んだせいで、日頃はマルコは、ちょっと特殊なキャラに思えるんだが、本作を読むと、普通にウルフファミリーの一人という感じ。
構成的には3作の中では、一番標準的なウルフものかな。アーチーのハッタリとウルフの洞察力が噛み合って、真相が明らかになっていく手際の良さに爽快感があって、良い出来だと思う。

最後の「ニセモノは殺人のはじまり」(Counterfeit for Murder)は初訳だけど、ペーパーバックで読んでいた。ゲスト登場人物のオバチャン(ハッティー)の印象が強烈な作品だったが、今回翻訳で読んでも同じ。事件自体がかなりあっさりしたものなので、なおさら印象が強い。ウルフもクレイマーも、物ともせずに蹴散らしていくんだ。スタウトが楽しんで描いているのが目に浮かぶよう。
これでウルフものの中篇は、別テイク的な作品を除けば、全部訳されたことになるはず(同人誌での翻訳を含む)。

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