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感想「The Japanese Corpse」

「The Japanese Corpse」 J・ヴァン・デ・ウェテリンク Ballantine books
フライプストラ、デ・ヒール、Commissaris(役職名でしか登場しない人物。邦訳では「主席警部」とか「警視」とかと訳されている)のトリオが登場するアムステルダム警察もの。初刊行は1977年。
シリーズが4冊邦訳されていて、しかも、滞日経験がある日本通の著者が書いた「日本人の死体」なんてタイトルの本だから、いずれ邦訳されるだろうと思ってたが、少なくとも現時点では出てない。
出ないかもと思った時点で、見掛けたペーパーバックを買ってあったが、そのまま放置で(多分)20年以上経過したのを、何となく読んでみた。

アムステルダム警察に、日米ハーフの女性が、フィアンセの日本人男性が失踪したと訴えてくるのが話の始まり。背後には、オランダへ麻薬や日本での盗難美術品を運び込んで、ヨーロッパで密売しているヤクザの組織があるらしい。日本にあるヤクザの本拠を壊滅させるために、Commissarisとデ・ヒールが別の密売組織を偽装した囮となって、日本に潜入することになる。
これだけでも、結構胡散臭い話に思える(^^;)。けれども、このシリーズは、元々リアルな警察小説を目指してるわけではないから、まあ、こんなもん。
本格的に怪しい話になって来るのは、彼らが日本に上陸してからだけど、さすがに2年の滞日経験がある著者だけに、実はそんなに変なことは書いてない(ヤクザのボスが「ダイミョー」だったりはするが)。ミステリの作りとしては、かなり適当ではあるけれど(たとえば、冒頭の男性の失踪は、結局ヤクザの組織とはあんまり関係ないことが分かって、話の半ばで、うやむやのうちにケリがついちゃう)、オランダ人の日本滞在記としてなら、そんなに違和感はないし、外国人の眼で見て描かれるエキゾチックな日本はかなり愉しい。
しかも、このシリーズの持ち味の一つの、話のそこここで、所構わず入り込んでくる登場人物の哲学的だったり、感傷的だったりする述懐が、日本滞在記として見ると、とてもうまくはまっている。
ミステリとしての出来を考えると、邦訳されなかったのは、その辺が理由かと思うけれども、個人的には十分楽しめたし、印象に残る小説だった。掘り出して読んでみてよかったと思った。

ちなみに、第二次世界大戦当時、オランダは東南アジア(主にインドネシア)に植民地を持っていたが、日本軍は現地に居たオランダ人の民間人やオランダ軍兵士の捕虜を虐待した。1977年に出た小説なので(1945年に日本が降伏して32年後)、そういう過去の経験を抱えたオランダ人が何人も登場するし、彼らが日本に対する不快感を表明する部分がある。(そういう歴史があるので、少なくとも戦後のある時期までは、オランダは親日的な国ではなかった、というのは、実際にオランダに行ったことのある人から聞いた、受け売りの知識)

一方で、江戸時代には、オランダ人が唯一日本に駐在を許されたヨーロッパ人だった、という歴史に触れるくだりもある。オランダが一時期フランスに占領された時、世界で一か所だけ、出島にオランダ国旗が翻っていたのだそうで、そういう観点も含めて、日本に好意的なオランダ人も登場したりする。

まあ、国と国との関係なんて、そんな単純なものじゃないよ、ということではある。
そういう、異文化の相互理解(もしくは、理解しあえるのか?という疑問)も、もちろん本書のテーマの一部。というよりはむしろ、そっちの方がメインテーマなんだろう。ヤクザとの対決が、実戦の要素は少なくて、神経戦だったり、まるで文化交流のようだったりするのも、その表れなんじゃないのかな。
(2015.1.21)

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