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感想「災厄の町」

「災厄の町」 エラリイ・クイーン ハヤカワミステリ文庫
昨年出た新訳版。これまでの翻訳では、ローズマリーはジムの妹だったのが、今回は姉になっているのが大きな変更点。この話を聞いた時、確かにその方が納得しやすい所がいろいろあるんだよな、と思ったし、実際読んでみて、やっぱりそう思った。こっちの方が自然。
ただし、それはプロットの本質的な所にはあんまり関係ない。そもそも、原著では姉か妹か明記してない(著者は、する必要がないという感覚だったはず)のが、この変更の発端だし。

ハヤカワミステリ文庫の旧訳を、何度読んだか分からないくらい読んでいたが、こうして新訳で改めて一から読み返すと、あれ、こんなくだりがあったっけ?、みたいな所が結構あって、何度も読んではいても、随分杜撰な読み方をしてたということが、分かってしまった(^^;)
ただ、印象が焼き付いているセリフや場面もそこここにあり、それが新しい文章で描かれている所には、旧訳との違いを感じた。今回の翻訳は原文を正確に日本語に置き換えていくことに力点があるのかな、という印象。逆に言うと、旧訳は実は結構、訳者の演出が入っているんだろうか、と思った。当たってるかどうかは知らない。そもそも、原文を知らないし。
旧訳には、元々、そんなに古めかしさは感じていなかったし(古いんだろうが、俺自身が、既にたいがい古いからね…)、特に不満はなくて、馴染んだ文章でもあるから、旧訳の肩を持ちたい気分はある。新訳は、より正確な翻訳にはなっているんだろうけど、何となく素っ気ない感じがする。ただ、こういうことでもなければ、きっちり最初から読み返すということもなかっただろうから。最初に読んだ時から、30年以上経って読み返したことで、内容の受け取り方や感じ方が随分違っていた気がする。もしかすると、旧訳との印象の違いも、翻訳そのものよりも、そっちの影響の方が大きいのかもしれない。子供の時よりも今の方が、内容をリアルに感じているのは間違いないし、よりくっきり見えている分、素っ気なく感じるのかもしれない。そういうことを考えるきっかけを作ってくれたという意味では、今回の新訳はありがたかった。

それはそれとして、パティー・ライトは、クイーンの小説の中で、一番存在感のあるヒロインなんじゃないかと思うんだけど、それは旧訳でも新訳でも変わらないな。
(2015.3.10)

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