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感想「辞書になった男」

「辞書になった男」 佐々木健一 文藝春秋
三省堂の2冊の国語辞典、「新明解国語辞典」と「三省堂国語辞典」をめぐり、それぞれの辞書を中心となって編纂した2人の人物の間に起きた軋轢を描いたノンフィクション。元々はNHKで放送されたドキュメンタリーがベースらしい。そのドキュメンタリーが作られたきっかけのひとつは「舟を編む」だったらしいから、本書を読んでいて、しきりにあの小説(と映画)を思い出してしまったのは、まあ、しょうがない。

元々は友人で、共同で辞書の編纂に取り組んでいた2人が、主に国語辞典に対する考え方の違いから、仲違いすることになった経緯が語られているが、思想が違っていた以上、いずれは必然的に道が分かれたとしても、もっと穏やかな形もありえたはずなのに、周囲の思惑が影響して、最悪に近い形で決別することになったというのが、やるせない感じ。
でも、その結果として、「新明解国語辞典」と「三省堂国語辞典」という、特徴的な国語辞典が世に出たという面もあるようだから、皮肉なもんだ。
そういうことを考えると、このドキュメンタリーの企画が始まった時に、三省堂の編集者が言ったという、「辞書が作られた過程や経緯を、一般の人が知る必要はない」という言葉は、的を射てるんじゃないだろうか、という気もする。興味深く読めた本ではあるけれど、こういう形で世の中に出すのが妥当な内容だったのかどうかと、少し思った。

ただ、辞書ってのは、編纂者の個性が出ているもので、決してニュートラルで無色なものではない、ということは、よく分かった。人間の活動の中に、「中立」「不偏不党」なんてのは、存在しないんだよな、と思う。
(2015.5.12)

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