« JFL2ndステージ第11節横河対沼津 | トップページ | 感想「神さまがぼやく夜」 »

感想「想像ラジオ」

「想像ラジオ」 いとうせいこう 河出文庫
東日本大震災をきっかけに書かれた小説。想像することで聴こえてくるラジオ放送を通じて、DJが語りかけるという設定で、生きてる人間が死者を想うこと、もしくは、死者が生きてる人間を想うことについて書いている。
ここで描かれる「死者」は、当然、主に大震災の犠牲者になるけれど、戦争の犠牲者への言及もあるし、もっと広い意味で、特に範囲を限定していないようにも取れる。作家の中で、最初の着想から次第に範囲が広がっていったんじゃないかという気がするし、むしろ、殊更に大震災と関連付けない方がいいようにも思える。
もちろん、大震災を直接的に描いた部分が本書の大きな部分を占めているから、完全に切り離すことは不可能だし、それは作家の意図にも反すると思うが。

作家が言いたいことは分かるし、大切なテーマだろうとも思うけど、自分にとっては、どうも難しさがあった。
大震災に関して言えば、多数の犠牲者が出たことはわかっているし、痛ましいとも思っているけど、直接的な知り合いには、地震や原発事故の影響を受けた被災者は居ても、生死にかかわるような犠牲者は居ないので、結局、それこそ、想像の中でしか、この本で書かれていることを理解出来ない。
広い範囲に拡張して、個人的な関わりのあった故人に対する想い、という観点で考えようとしても、さしあたり今のところ、そこまで近い関係に居たと思える故人というのが居ないので、そっちの次元でもいまいちピンと来ない。
結局、俺はまだ、死者を悼むということが、理解できていないんじゃないかな。そのうち分かるのかもしれないし、一生分からないかもしれない。だから何、ということもないけど。

そうしたテーマ性を離れた部分について言うと、こういう語り口は、あんまり趣味じゃなかった。堅い人間が、無理して軽いノリで書いているような感じ。今までに読んだエッセイ的な文章では、こういう筆致がうまくはまっていた気がするんだけど。
結局、今一つ合わない小説だった、ということになるか。
(2015.10.3)

|

« JFL2ndステージ第11節横河対沼津 | トップページ | 感想「神さまがぼやく夜」 »

「小説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3787/62523984

この記事へのトラックバック一覧です: 感想「想像ラジオ」:

« JFL2ndステージ第11節横河対沼津 | トップページ | 感想「神さまがぼやく夜」 »