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感想「雪の墓標」

「雪の墓標」 マーガレット・ミラー 論創社
雪が降り積もった寒くて陰鬱な地方都市が舞台。そういう中に内省的で不安定な登場人物たちが次々、ふらふらと現れる所が、とてもミラーっぽい。去年邦訳された「悪意の糸」は、ここまでは特徴的じゃなかった気がするので、さすが全盛期直前の作品、と思った。
男が殺された現場で、女が泥酔状態の意識不明で見つかり、二人とも既婚者で不倫関係。現場の状況からは確実に女が犯人と思われたが、自分が殺したと自首してきた男が現れて、話がややこしくなっていく。
プロットの細かさもひねり方も、とてもミラーらしさを感じさせるもの。ただ、アイディアはいいんだけど、やや存在感の薄い人物が絡んでいる分、クライマックスで、いまいち衝撃力が弱かったように感じた(解説にもそういう趣旨のことが書かれている)。
人物や構図は、比較的シンプルで、むしろ全盛期の後の作品群に近いように思えたが、悲劇性の高い筋立てが素直に語られているあたりが、初期作だなと思う。なにがしかの救いを残して話を終ろうとするやさしさは感じられるけど、登場人物たちにとって本当に救いになっているのか、今一つ信じきれない。
後年の作品は、ストーリーにも人物像にも幅があって、ここまでシンプルじゃないし、悲劇からはみ出した遊びの部分に、登場人物たちの逃げ場があると思えていた気がする。そういう幅の広さがリアリティにもなっていて、感情移入しやすい人物像が形作られていた気がする。
そういうわけで、本書の完成度はもうひとつじゃないかと思うけれども、ミラーの小説を読んだという実感は十分感じられたから、十分満足はできた。

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