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感想「原子力政策研究会100時間の極秘音源」

「原子力政策研究会100時間の極秘音源」 NHK ETV特集取材班 新潮文庫
「原子力ムラ」の内側の重鎮たちが、日本に原発が導入されて広がっていった経緯を記録として残しておくべく、語り合って録音したテープをベースとして作られたドキュメンタリー番組の書籍化。

資源小国の弱みや、深刻な電力不足が現実問題としてあった時代に、原発の導入が決定されていった経緯はよく分かるし、そこで十分な検討なしに、実用化ばかりが先行していったことや、一旦走り始めると、利益ばかりが重視され、安全性がないがしろにされていった経過も、この国の社会構造として、まあ、そうなるだろうな、というものだった。

技術系の開発の仕事がどんな風に動いていくか、知らない訳じゃないんで、311の原発事故の後、表に出てきたいろんな話は、全然意外じゃなくて、よくある話に思えた。ただ、原発という、何かあった時の被害がとんでもないものになるような技術なら、さすがにいくらなんでも、一般的な開発業務よりは安全性が特に重視されているんだろうと、漠然と思っていたのが(だからと言って原発が絶対安全だとも思ってなかったが)、当時、いろんなことが表沙汰になって、どうやらそうじゃなかったらしいと分かったのは、やっぱり衝撃だった。その程度の感覚で原発をやっていたのかと思ったし、やっぱり本当に信用出来ないんだと、はっきり分かった。そこが俺の「現時点での」反原発の原点ということになるかもしれない。
本書を読んで、その感覚を再確認した感じがする。

実際の所、開発してる側としたら(特に下っぱは)、普通にやるべき業務をこなしていた、という以上の感覚はないんだろうと思う。むしろ、本書に書かれている通り、使命感みたいなものがあったとしても、不思議はないから、いくらか不正行為があっても、目的は手段を正当化する、くらいのことは考えていただろうな。俺もそこに居たら、そうだったかもしれないと思う。だから、やってた方に悪気がないのも不思議はない。
結局、扱っているものの深刻さをどこまで考えているか、何か起きたらどうなるのかを考える想像力の問題なんだと思う。でも、そういう感覚がある人間は、多分、最初からこんなにヤバいものには手を出さないんだよな。結果的に何も考えてない人間が、危ないものに手を出して、破滅的な事態を作り出す。文明って、そうやって滅んでいくのかもしれないという気もする。

事態が動いて加速がつけばつくほど、止めるのは難しくなるというのも、この本に書かれていることだと思う。だから、最初が肝心。何が起きるか、どういうリスクがあるか、よくわかってもいないものを始めちゃいけないということだと思う。
それじゃあ進歩はないかもしれないけど、文明が滅びるよりはマシじゃないかな。ただ、肝心な場所にバカが一握り居れば、プロセスが進んでしまうのも確かなんだけど。
ある意味、そういうふうな一握りのバカに好き勝手させないためのシステムが民主主義かもしれない。それにしても、バカが一握りじゃなくて、マスになっちゃったら、もうどうしようもないんだが。
(2016.4.10)

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