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感想「フィフティーズ」

「フィフティーズ」 デイヴィット・ハルバースタム ちくま文庫
50年代のアメリカ社会で起きた様々な変化について論じたもの。一般的には巨大な変動が60年代に起きたと思われているが、安定していたと思われている50年代に、むしろ、その変動が準備されていた、ということを書いている。
いろいろなテーマについて、キーになる人物にスポットを当てる形で(そういうスタイルなので、「フィフティーズ」というのは、「50年代」というだけでなく、「50年代人」というニュアンスも込めているのかなと思う)、ひとつひとつ細かく述べているので、分量も多く、文庫3分冊。読むのに一月かかった。まあ、一月ずっと、この本だけ読んでたわけじゃないが。

アメリカの50年代が背景になった小説とか映画とか、いろんなものを随分読んだり見たりしてきたけれど、あれはそういうことだったのか、と思わされる所があちこちにあって、かなり興味深かったし、今のアメリカを見るにしても、こういう背景があることを知っていれば、随分違うと思った。だいぶためになった。
俺にとって、アメリカの50年代は元々憧れでも何でもなかったけど、これを読んでると、いよいよ嫌な時代に見えてくる。とはいえ、悪い面だけでなく、いい面もあったと思えるし、単純にひとくくりには出来ないね。

ちなみに、50年代といっても、あくまでもアメリカのなので、日本の50年代とは全然話が違う。背景に、マッカーサーが支配する日本が見えるくらいだから。
むしろ、今の日本が、ようやくアメリカの50年代なのかもしれないと思う所もちらほら。というか、今の日本の社会のいろんなあり方が、遡るとアメリカの50年代に端を発しているんだな、という感じ。価値観とか、労働者と企業の関係とか、家族の形とか。

劣勢だった共和党が、共産主義の脅威を強くアピールすることで、民主党から主導権を奪い、赤狩りでいろんな人間を陥れていったやり方は、容易に今の自民党とその周辺のやり口を思い出させる。彼らはそういう所を歴史に学んできてるのかもしれないなと思った。
それでも、共和党・民主党で単純に割り切れない複雑さがあるのがアメリカだし(この辺の構図もなかなか理解出来ないんだけど、本書を読んで、今までで一番よく理解出来た気がする)、民主党=良識的というわけでもない。
むしろ、入り組んだ構図の中には、良識的な考え方が伸長する隙間もあって、それが公民権運動や女性解放に繋がったという風に見える。文化の多様性がそうした隙間を作っているように思えるし、そこがアメリカの良さなんだろうと思う。
もちろん、アメリカのどこにでも常に多様性が許容されてる、というわけじゃない。そんなに素晴らしい国じゃないし、他にもダメな所はたくさんある。そうはいっても、近頃のこの日本では、多様性を許容するそういう空気を感じることが少な過ぎるし、権力に対して素直に従い過ぎると思う。そういう所は、アメリカの方が、まだマシなんじゃないんだろうか。
(2016.5.14)

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