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感想「霜の降りる前に」

「霜の降りる前に」 ヘニング・マンケル 創元推理文庫
クルト・ヴァランダーものではあるけど、イースタ署勤務の警官になった(なりかけている)娘のリンダの方が主役なので、番外篇的。以降は、このスタイルでシリーズが書き継がれる構想もあったのかもしれないが、これ以降、書かれたシリーズ作品は10年近く後に出た1冊だけだし、昨年、著者が亡くなったこともあり、やはり実質的に単発っぽい趣向だったんじゃないかな。10年後の最終作が、どういう内容だったのかは気になるが。
帯には「追悼」と記載されているが、元々出す予定だったんだろうと思う。ただ、先行する第9作を飛ばして、これを邦訳した理由はわからない。

残酷な動物連続殺害事件に引き続いて殺人事件が起き、突然居なくなった親友がそれに絡んでいる気配を感じたリンダが暴走する話。リンダはまだ正式には着任してないし、そもそも新人警官だから、捜査権限なんてないんだけども、首を突っ込み続けているうちに(手がかりを見つけたこともあり)、捜査に関わることをうやむやに許してもらう。小説だからなのか、スウェーデン(の田舎町)だからなのかは、よくわからないけど、日本の感覚からしたら、ちょっとリアリティがない気はする。ただ、30歳目前にした一般人女性が警官を志すという状況自体が、日本ではリアリティないし、逆にヨーロッパではそうでもなさそうだから(他の作家の小説でも、その辺、かなり緩い印象がある。まあ、国にもよるだろうけど)、やっぱり国柄か。
それを抜きにしても、リンダの衝動的な行動ぶりは、ちょっとどうかなと思う所が多い。元々、父親のクルトもエキセントリックな所があるし、これも北欧人にとっては普通なのか?
近年、北欧系のミステリの翻訳が流行ってる感があるが、読むと、だいたいいつも、感性がかなり違うという印象を覚える。事件が無意味にやたらと猟奇的だったりする所もそう。そう感じる読者って、あんまりいないんだろうか。それとも、そういう独特さが面白がられているのかな。
俺は最初は面白かったんだけど、読んだ本の数が増えるうちに、違和感がもたれ気味になってきた感じ。

本書についても、結局、犯人がこうした事件を起こした必然性が語られていないように見える(宗教的な儀式だったとしても、何をどう解釈したら、こういう残虐な行為になる、という説明が欲しかった)。つまり無駄に猟奇的だと感じた。信じがたい偶然の一致で済ませている部分もあるし、作りは全体的にかなり雑な印象。今一つ、訴えたいテーマもよく分からず、リンダが警官としての一歩を踏み出す物語、という以上のものは感じにくい。というか、あくまでも、そういう話なのかもしれないけれど、だとすると、続篇がないのは、やはりかなり残念。
(2016.6.20)

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