« 「グレート・ミュージアム ハプスブルグ家からの招待状」 | トップページ | トップリーグ第13節 キヤノン対クボタ »

感想「ラバー・バンド」

「ラバー・バンド」 レックス・スタウト ハヤカワポケミス
ネロ・ウルフもの。ミステリ文庫で既読だし、比較的近年にも再読してるが、佐倉潤吾訳のポケミス版は読んだことはなかった。ミステリ文庫版は斉藤数衛が改訳している。ウルフものは佐倉訳が一番しっくり来るイメージがあるから、つい先日、このポケミス版が手に入ったので読んでみた。

話は本当に良くできていて、そんな調子のいい偶然が?みたいに思える所が、解決篇で次々きっちりはまっていくのが巧み。よく考えられている。ウルフものの中では上位に来る作品じゃないかと思う。
ただ、作品としては既読だから、それはある程度、分かってた話ではある(なぜ「ある程度」止まりなのかというと、例によって、話の中身をたいがい忘れていたからだけど(^^;))。今回は佐倉訳で読むというのが最大の目的だった。佐倉訳の味というのは、例えば5章の最後の方のウルフを中心としたやり取りの場面。ウルフ(とアーチー)のイメージが生き生きと浮かび上がってきて、わくわくする。そもそも、ウルフものを読む愉しさというのは、プロットよりもこうした描写にあるわけで、この訳者はそれがよくわかってる。斉藤訳もそんなに悪くはないけれど、いくらか硬い感じを受ける。もちろん、どちらがスタウト本人の感覚により近いのかというのは、分かりゃしないんだが、より親しみの持てるのは、やはり佐倉訳だろうと思う。

もちろん訳文自体はかなり古めかしく、ミステリ文庫に入れるには改訳は必須だったと思う。ちなみに「毒蛇」「腰抜け連盟」「赤い箱」は佐倉訳でミステリ文庫に入っている。これらのポケミス版は読んでないが、時期的に考えて訳文は「ラバーバンド」と大差なかったと思われるし、それを分かっていて、改訳して文庫化したんじゃないかなあ。「ラバーバンド」だけ訳者が違うのは、これが時期的に一番遅かったので、多分佐倉さんがもうやれなくなっていた、ということではないかと。この本を譲ってくれた方とは、この一冊はよっぽど問題があったんですかね、という話をしたが、読んでみると、あくまでも古めかしいだけで、翻訳がめちゃくちゃとかそういうことではないので、単に時期だけの問題だったんじゃないかなと思った。

今回も楽しく読めて良かった。

|

« 「グレート・ミュージアム ハプスブルグ家からの招待状」 | トップページ | トップリーグ第13節 キヤノン対クボタ »

「小説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3787/64847644

この記事へのトラックバック一覧です: 感想「ラバー・バンド」:

« 「グレート・ミュージアム ハプスブルグ家からの招待状」 | トップページ | トップリーグ第13節 キヤノン対クボタ »