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感想「死者は語らずとも」

「死者は語らずとも」 フィリップ・カー PHP文芸文庫
ベルンハルト・グンターもの再開後の3作目。

正直、このシリーズは読んでてしんどいので、あんまり一気に読めなくて、ダラダラ読んでいた。7割くらいまでがナチス支配下のドイツが舞台で、非人間的な状況が、これでもかというくらいに描かれる。今読んでて辛いのは、記述そのものだけじゃなく、ここで描かれてるいろいろな抑圧や横暴が、必ずしも他人事ではなくなりつつある、という実感があるからで…。著者もそういう意図で書いてるんだと思うよ。程度の差はあっても、そういう動きは日本に限らず、世界共通した流れのようだから。

残り3割はカストロが台頭し始めた時期のキューバが舞台。まだ革命までは時間があるが、流れは始まっている。グンターはドイツのパートで出会った人間と、時を隔てて再会し、いろんなことが起きる。もちろん、殺人事件も起きる。ただ、再開第一作「変わらざるもの」のような大仕掛けはないので、ミステリとしての印象はそんなには強くない。テーマ的には悪はあまねく存在する(ナチスだけでなく)、というあたりじゃないかと思うし、そっちの方がずっと印象的。
ちなみに前作「静かなる炎」は後半部のアルゼンチンのパートも真っ暗で、読んでて本当にしんどかったんだが、それに比べれば本作のキューバのパートはまだ救いがあるなと思った。割と楽には読めた。

ドイツのパートは背景にベルリンオリンピックがあって、ナチスの所業を知らんぷりして参加を決めたアメリカってのが、大きなポイントになってる。所詮、オリンピックなんて、昔から腐ってたという気もした(その辺のことは、昔、「ヒトラーへの聖火」でも読んだはず)。
(2016.12.15)

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