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感想「拾った女」

「拾った女」 チャールズ・ウィルフォード 扶桑社ミステリー
10月頃、久々にこの作家の翻訳が出てるのに気付いて、買わなきゃと思ってるうちに、年末になっていた。ちなみに、巻かれていた帯によると、年末恒例のベストミステリ選びでは結構いい結果になったらしい。まあ、以前、立て続けに翻訳が出てた頃には定評があった作家だから、票も集めやすかっただろうし。

で、年が明けてから読んだ。
冒頭を読んでいて、魔性の女に関わって、破滅していく男の(割りとよくあるパターンの)話かあ、と思ったんだが、その辺の辛気臭い展開に早々にケリがついてしまうあたりに、この作家らしいひねりを感じた。で、そこから、ジム・トンプソンみたいな狂気の世界へ入っていくのかと思えば、これも軽く流す。この辺の外しっぷりも、ウィルフォードらしくていいなと思っていたら、最後に仕掛けてきたよ。
これは頭からもう一度読まないと、と思った。巧いなあ。
こういう内容の小説がミステリかというと、結構微妙かと思うんだが、仕掛けのセンスは明らかにミステリだよな。

計算されてはいるにしても、そんなに丁寧に書かれているとは思わないが、主人公の絶望感は強く伝わってくる小説だった。この主人公が、根底の部分では破綻していない(壊れることによって逃避することが出来ない)人間だということが、この小説に強い悲劇性をもたらしているんじゃないかと思う。
(2017.1.16)

[追記]
結末を読んだ上で再読してみた。
その結果として、結末を意識した仕掛けなんだろうと感じた箇所は、作中にいくつかあったけれど、それほど強烈な印象を残す場面はなかったように思った。
ただ、それは作家の意図とは限らないと思う。なにぶん、翻訳なので、原文のニュアンスを完全に伝えきれている可能性は低いだろうし、本書が書かれた時代(1954年刊行)も、場所も、人間の意識も、現代の日本とは全然違うはずだから、著者の狙った効果を、感覚的なレベルで受け止め切れるわけもないという気もするので。
残念ではあるけれど、まあ、そういうものじゃないかな。
(2017.2.3)

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