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感想「岳飛伝」11

「岳飛伝」11 北方謙三 集英社文庫
いよいよ決戦が始まった、と思ったが、結局、大きな情勢の変化もないまま終了。梁山泊と金とで、合わせて万単位の戦死者が出ているのに、何も事態が変わらないというオチなのは、戦うことの虚しさを訴えているように取れなくもない。
このところ、戦が起こらない状況を作るために戦う、軍の存在理由は軍が必要のない世界を創ること、みたいな言い回しで、決して非戦ではないけれど、登場人物が戦の無意味さを語る場面が増えて来ていると思う。昔の北方の小説と、方向性が変ってきているように思える。元々、特別、好戦的な小説を書いていたとは考えていないけれども、以前は、戦いそのものに生きがいや喜びを見出すというニュアンスが、今よりもずっと強かった気がする。著者の物事の考え方に、変化が起きているのかな。まあ、長い間、小説を書き続けているんだし、ものごとの捉え方が変わってきたとしても、不思議ではない。
現時点での話の根底にある、領土の確保ではなく、流通で国を作ることで、生活者の幸福が実現されるという考え方は、かなり単純化した構図ではあるけれど、理屈は通っていると思う。でも、それがある程度は実現している今の世界も、そうした理想的な世の中にはなっていない。この小説は、「国」の在り方というのを、かなり突き詰めて考えようとしていると思うけれど、現実に理想的な世界が生まれてきていないのはなんでだろう、というのを考えるきっかけにもなるんじゃないかな、と思ったりする。

そういえば、インドシナ半島に梁山泊の面々が植民しているが、直前に読んだ「イザベラ・バード」で、マレー半島での中国人の存在の大きさについて書かれていたのを読んで、なるほどと思った。そういう状況も把握した上で、話を作っているんだろうな。これだけの巨大な小説を書くのに、著者がどれだけ情報を集めているのかと思うと、くらくらする(^^;。
(2017.10.12)

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