感想「寂滅の剣」
「寂滅の剣」 北方謙三 新潮文庫
日向景一郎シリーズの5作目で最終作。
本屋で偶然見かけて、読み落としていたことに気付いた。文庫版は2012年に出ていたらしい。このシリーズは、北方の小説の中では、そんなに好きな方ではないけど、それが理由ではなくて、単純に見落とし。見つけられてよかった。
前作を読んでから、相当日が経っているので、どういう話だったか、たいがい忘れていたが、めちゃくちゃ強い剣豪が敵を斬りまくる話、というイメージだけで、十分通じた感じ。もっとも、最終作らしく、過去4作に出て来た登場人物の総ざらいのような雰囲気があるのに、覚えていないので、その辺がはっきりしないのは、ちょっともどかしかった。
本書では、何人もの常軌を逸した剣豪が、主人公側と敵側に分かれて死闘を繰り広げ、さらに、大人数で襲い掛かってきた敵側を、主人公側が斬って斬って斬りまくる。こうした斬り合いそのものの娯楽性が、本書の(というか、多分、このシリーズの)読み所と思えるし、北方謙三の時代小説にしては、少し異色という感じ。
血生臭くて残酷な場面が多いが、あまりリアリティがない分、娯楽小説として割り切って楽しめる、という気はする。というか、そもそも、そういう風に読むための小説だと思う。なにせ、二段重ねで襲い掛かってくる二人組の刺客、なんてのが登場してきたりする。これが娯楽小説でなくてなんだ?(^^;
シリーズの過去の作品よりも、気楽に面白く読めたように思うんだが、それが本書の内容から来るものなのか、単に旧作を読んだ時の印象をちゃんと覚えていないからなのか、自分の嗜好が微妙に変わっているからなのか、その辺はちょっとわからない。
(2017.10.23)
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