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感想「ラブラバ」

「ラブラバ」 エルモア・レナード 早川書房
先日、ポケミスから出た改訳版ではなく、1985年に出たハードカバーの旧訳版。ポケミス版を入手しようかどうしようか迷っていて、とりあえず読み返してみることにした。こちらの訳者は鷺村達也(新訳は田口俊樹)。ただし、これは知人から譲り受けたもので、最初に読んだのは刊行直後ではなかった。
原著は1983年の刊行で、MWAの長篇賞を受賞したことが理由で、邦訳されたような印象がある。邦訳刊行はレナードの邦訳ラッシュが始まる前の時期だったが、自分が読んだのは、ラッシュが始まってからだったはず。

タイトルは主人公の男の名前で、国税庁やシークレットサーヴィスで勤務した経験を持つ、駆け出しの写真家。彼が子供の頃に憧れていた女優と出会い、彼女が絡む犯罪に巻き込まれる話。
何か起きそうな気配は冒頭から立ちこめているし、小さな事件はそれなりに起きるけれども、いかにも犯罪小説らしい展開はなかなか始まらず、個性的な登場人物たちや、人物同士の関わりのエピソードでつないでいく。このあたりがいかにもレナードらしい面白さ。そこまで見え隠れしていた犯罪計画が、いよいよ動き始めるのは小説が半ばくらいまで来てから。
ミステリ的にひねった仕掛けもあるが、最終的には落ち着くべきところに落ち着いたという感はあり、その辺はレナードの小説にしては、少し物足りなさがある。登場人物が勝手気ままに動いていくというのではなく、あらかじめ構成されているプロットに乗って動いている、という感じがしてしまうので、自分がレナードに期待するものとは、少し違うような。ただし、きれいにまとまってはいる。その辺が、賞を取った理由の一部でもあるのかもしれない。

いかにもヒーロー然とした主人公が、結局、必ずしも格好いい結末を迎えていないあたりには、レナードらしいひねりを感じる。それほど強い印象は残さないこの主人公がタイトルになっている所に、初読時からいまひとつピンと来ないものを感じていたが、改めて読んでみて、最初はカタギだった人物が、次第にヤクザっぽくなっていく過程を描いた小説と考えることも可能なのかなと思った。今回の再読では、主人公の意識の変化を描いているくだりが結構多いことに気付いた。その辺に著者の意図があるのだとすれば、彼がタイトルになっているのも、不思議ではないわけだな。
ポケミス版を読むと、その辺が(あるいはそれとは違うことでもいいけれど、著者の意図が見える何かが)もっとはっきり見えてくるというのであれば、読んでみる値打ちはあるかなあ。ただ、旧訳版も、こちらだけを読んでいる限り、それほど不満は感じないのだけど。

それから、どちらかというと、主要登場人物よりも、ちょい役的な人物の存在感の方に魅力を感じた小説だった。ラブラバに写真を撮ってもらう、マイアミビーチの雑多な住民たちが生き生きしている。街の雰囲気も、うまく描かれていると思う。要は、犯罪小説らしい所ではない部分の方に、愉しさを感じたように思う。確かに、日頃から自分がレナードを読んでいて愉しんでいるのも、どちらかというとそういう部分なんだよな、と思った。

レナードの小説の中で特に出来がいいわけではないと思っていたが、再読しても、その印象は変わらなかった。
ただ、ポケミス版の刊行をきっかけにして、またレナードの新しい邦訳が出てくれれば嬉しいし、そのためのささやかな貢献という意味では、やっぱりポケミス版を買うべきなのかも?
(2017.12.20)

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