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感想「イヴのいないアダム」

「イヴのいないアダム」 アルフレッド・ベスター 創元SF文庫
短篇集。近年、ベスターの小説をいろいろ読んで、この人はSF作家というより、SFの形式を使って格好いい小説を書いた人と考えた方がいいのかな、と思うようになっていた。
本書は、冒頭の2篇(「ごきげん目盛り」「ジェットコースター」)がまさにそういう印象で、凄いなあと思ったけれど、その後の短篇は、むしろSFっぽさの方を強く感じた。あとがきでベスターの経歴を読むと、SF作家としてのキャリアは割と断続的だし、作風の変遷もあるようだから、自分が特に感銘を受けたのは、彼の一部分に過ぎないということなのかもしれない。もっとも、感銘を受けた作品は、どれも代表作のようだけれど。
ちなみに冒頭の2作も、れっきとしたSFではあると思う。自分が勝手に、独特な衝撃の強いサスペンス小説として受け止めたというだけのこと。それはこちらの嗜好によるものだから、作家本人とは全然関係ない。
それ以外の作品も、おおむね良い出来と思ったが、どこかで読んだことがあるような気がしないでもない、とは思った。だとしても、もちろん、べスターの方が先なのかもしれない。その辺もひっくるめて、SFっぽい(SFのジャンルの中に居る)、という印象になったんだろうと思う。

それはそれとして、全体的に思うのは、原爆投下直後の世界では、人間が滅亡するんじゃないか?という危機感が、本当に強かったのだろうな、ということ。本書は1950年代に書かれた短篇が主体になっているが、そういう気配が色濃い作品が大半を占めている。そういえば、ディックの小説もそうだったなと思い返した。
その状況は今も全然変わってない、というより、近年、また強まっているはずなんだが、世の中の危機感は随分薄くなってるように感じる。やっぱり記憶が薄れているせいなんだろう。危険な兆候だと思う。
(2017.12.27)

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