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「幸せになるための5秒間」

2014年の映画。2016年にWOWOWで放送された時の録画を、やっと見た。原作はニック・ホーンビイの小説「ア・ロング・ウェイ・ダウン」で、読んでいる。本のタイトルは原題をカタカナにしただけ。おそらく、映画化されたということもあって邦訳されたが、出版までに映画の邦題が決まらなかった。結局、2016年にWOWOWで放送されるまで、日本未公開だったらしい。でも、この映画邦題はダサ過ぎなので、まだそのままカタカナの方がいい。ちなみに原題は、原作のあとがきに書いてあったが、ビルのてっぺんから飛び降りるというような、手っ取り早い降り方ではなく、人生を「ゆっくり降りる」というような意味合いなんだそう。

大晦日の夜、自殺の名所のロンドンの高層ビルの屋上で、自殺志願の男女4人が鉢合わせして、気勢を殺がれて目的を果たせないまま、ビルから降りてしまう。そこからの、年齢も背景も様々な4人の交流を描いていく。

こんなハートウォーミング的な話だったっけ?、と思って、見た後に原作を軽く読み直してみたが、最後の方がバッサリ切られて、ハッピーにまとめあげられてる以外は、そんなに原作との乖離はない。というか、そもそも、ニック・ホーンビイの小説は、語り口や登場人物は尖っているけど、ストーリー自体は、割と素直なヒューマンコメディという感じだから。ただし、最後は、こんなに安直にはまとめない。とりあえず、何とかなったけど、先のことはわからない、という感じの終わり方をすることが多い印象。
それから、原作は、4人の男女が代わるがわる一人称を交換しながら話を進めていく形式で、全く違う4通りの語り口が最大の特徴だと思う。しかし、映画ではそれを生かすのはかなり難しい。必然的に原作からは、ストーリーラインを持ってきたところばかりが目立つ形に、ならざるを得なかったかな、と思う。

もうひとつ思ったのは、4人が自殺を決意するに至った経緯について、この映画だけだと、あまりよく分からないんじゃないだろうか、ということ。彼らの動機は、たとえば経済的に困窮して、生きていけないから自殺するというような、そこまで分かりやすいものではないので。原作では一人ひとりの長いモノローグで、曖昧ながらも納得させられるんだけど、映画ではそこまで尺がない。自分の理解では、自殺を考える/考えない、自殺を決行する/決行しない、の境目自体が曖昧なもの、というのが著者の考えにあって、その点についての考察も、本書の結構大きなポイントだから、そこが落ちてしまうと、何だか物足りない話になってしまう。ただ、JJの絶望感みたいなものは、(原作とは少し違うと思うが)割とうまく描かれていた気はする。

個人的には、全然物足りない映画だけれども、個性的な4人の主人公たちはうまく演じられていたと思うし、原作とは違う持ち味の話と割り切って、人生、生きてればいいこともある的な、ハートウォーミングなコメディとして見るなら、十分楽しめる映画なのかな、とは思った。そういう見方をするなら、この邦題でも、そんなに違和感はないだろう。

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