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感想「これで古典がよくわかる」

「これで古典がよくわかる」 橋本治 ちくま文庫
日本の古典というのがどういうものかというのを、わかりやすく説明した本。原著は1997年、文庫版は2001年の刊行。
ちなみに、前半部は主に、古典そのものを、わかりやすく説明したわけではなくて、平安時代以前の古典が、なんでとっつきにくいかというのを、わかりやすく説明している内容。単純に言っちゃえば、平安時代以前の古典の書き言葉は、今の日本語とは違っているから、ということなんだろうと思うが、それで合ってるかな。

要するに、日本語を書き表すにあたって、元々は中国から貰ってきた漢字を使っていたが(万葉仮名)、それが不便なので、漢字から派生したひらがな・カタカナを使って書き表す段階を経て、現在の表記に通じる、かな漢字混合文にたどりついた。だから、かな漢字混合文より前の文章は、読みにくくって当たり前だと。納得しやすい説明だと思う。
で、何が書いてあるかわかってみれば、今時の日本人とそう大差ないことを書いているに過ぎないので、そんなに分かりにくいものではないよ、と。この辺に関しては、近頃、日本の古い絵画の展覧会に行って、絵巻物などを見ると、これって今時のマンガと大差ないんじゃない?、と感じることが、あまりにも多いので、日本人の考えることというのは、昔から大して変わってないんじゃないかと思うようになっているから、素直に、そうだろうなあ、と受け止めた。源実朝って、そういうことを書いていたのか、と思うと、急に身近に感じられたりする。

書き言葉の表記の問題については、しばらく前に読んでいた、田中克彦の漢字廃止論に通じるものがあると思う。別に橋本治は漢字廃止論を語っているわけではないが、日本語を書き表すためには、それに向いた文字体系がある、という話であり(かな漢字混合が読みやすいと言っているから、漢字廃止論ではないよな。まあ、そもそも、そういう文脈の話をしているわけではない)、漢字というのが、どれだけタチが悪い文字か、ということも書かれているので。

それはそれとして、古典というのが、難しく重々しいものであるというイメージが形作られたのは明治時代だ、というのは、よくわかる。明治の新政府というのは、自分たちを権威づけるために、いろんなものをねじまげたんだよね。
江戸時代に、自分たちが抑圧されていたと思っていた連中が、天下を取った勢いで、偉そうに振る舞ったというのは、分かりやすい話ではあるけれど、それが原因で、日本はおかしな国になって、1945年に滅亡寸前まで行った。
そこで一旦はリセットされたけれど、執念深く生き残って、無反省に明治時代を賛美しようとしている連中が、また今、のさばっている。明治時代が、それ以前に比べて、すべてダメだったとは思っていないが、間違いなく、手放しで賞賛してよいような時代ではなかった。
こういうテーマも、結局、そういう所に行きついてしまうんだな、という感じがする。根拠がないもの、反省がないものは、きっちり批判していないといけない、ということだと思うんだが、今の日本は、国レベルでそういう所がまるでダメになっているよな。

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