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感想「ドクター・マーフィー」

「ドクター・マーフィー」 ジム・トンプスン 文遊社
1953年に書かれた長篇で、昨年邦訳されたもの。

財政難で破綻寸前の、アル中患者の療養所を舞台にした小説。資金繰りに頭を悩ます療養所を経営する医師、そこで働くスタッフたち、入院しているアル中患者たちが繰り広げるドタバタが描かれる。

サスペンスでもミステリでもない。トンプスンのその種のジャンル小説での傑作は、既に一通り訳されているというから、単純にトンプスンの名前から期待するような小説でないのは、ある程度予想していたけれど、ここまでとは思わなかった。先日読んだ「天国の南」は、終盤の雰囲気は少し違ったとはいえ、ストーリーとしては、過去に邦訳された小説に通じるものではあった。本書はそういうものでもない。
ただ、登場人物のフリークス趣味みたいな所は、紛れもなくトンプスンだと思う。登場人物は誰もかれも破綻しているし、それが戯画的に描かれている所に、らしさは見て取れる。とはいえ、だから何?、というのを、思わないわけにはいかない。自身がアル中で苦しんだトンプスンの姿が見え隠れしてくるようではあるけれど(最後の方に、自身をモデルにしたとしか思えない、アル中の作家も出てくる)、それをテーマとして突き詰めた小説にも見えない。狙い目としては、アル中を登場人物にしたドタバタ喜劇、ブラック・コメディといった所だったんだろうが、だとしてももう少し突き抜けたものがないと笑うこともできない。一般的な読者を対象とした、娯楽小説としては厳しかったんじゃないかと思う。

トンプスン的な雰囲気を僅かでも感じられればそれでいい、というような読者にしか、向かない小説じゃないかと思った。
(2018.2.15)

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