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感想「ドロシアの虎」

「ドロシアの虎」 キット・リード サンリオSF文庫
1973年刊行の長篇小説で、邦訳刊行は1984年。
20年以上前に古書で入手したが、読まずに放ってあったもの。

主人公のドロシアは、少女時代にアメリカの地方都市に母親と流れ着いて、底辺の暮らしをしていた女性。成人して有力者の息子と結婚し、その土地の中流階級の保守的なコミュニティに所属しているが、少女時代に仲間だった男が殺された事件をきっかけに、中流階級を取り繕っている外面と、過去を引きずっている内面(「虎」のイメージがその象徴として現れる)のギャップに、苦しめられていく話。
とりあえずSFではない。ミステリでもなく、そうしたジャンル小説ではない。さすがサンリオ「SF」文庫。

いろんなテーマが重層的に取り扱われていると感じるが、中心にあるのは、子供が大人になる、ということではないかと思った。それも二つの面があり、ひとつは、子供の頃に思い描いていたことが、大人になって、現実を目の前にすることで消えていく、というあたり。もうひとつは、子供が敏感な感受性で抱くような性質の不安感や罪悪感を、大人は忘れる、もしくは共同幻想の中に逃げ込むことで、忘れたふりをする、ということ。そうでないと、精神が耐えられなくて、生きていけないから。結末でドロシアが見つける逃げ道が、要するにそういうことで、だから、そのあたりをメインテーマと考えていいんだろうと思うんだが、そこに至るまでのドロシアの苦悩(読んでいて、実感として、とても共感してしまった)の激しさに対して、その逃げ道があまりにも簡単に提示されているように見えるので、何だか拍子抜けしてしまった。

ただ、著者の意図としては、別にそうあるべき(「大人」になりましょう)と言っているわけではなく、そうでなくては生きにくい世界の現実を描いている、ということだろうと思う。
裏を返せば、誰もがそういう罪悪感や不安感を押し隠しながら生きている、ということでもあり、ドロシアの救済も、誰もがそうなんだと気付くことが、ひとつのきっかけのわけだから、このように解釈するのは、それほど間違ってはいないと思う。

結末の部分で少し戸惑ってしまった以外は、ドロシアに強く共感したこともあり、強く心に迫るものを感じる小説だった。というか、結末で戸惑っってしまったのも、ドロシアの苦悩への共感が強すぎたせいかもしれない。
(2018.3.11)

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