「ゼイリブ」
ジョン・カーペンターが1988年に監督した作品。ジョン・カーペンターは、よく考えると、「ニューヨーク1997」しか、本当に好きだった作品はないんだけど(実はそんなに本数を観てもいない)、何となく、好きな監督というイメージがあって、代表作のはずの「ゼイリブ」を見てないのを、長年、残念に思っていた(と言いつつ、「ハロウィン」を観てないのは気にしてない。元々、ホラー映画は見ない人間なので)。映画自体は見てないけど、予告編だけはかなり度々見たもんだから、サングラスを掛けると、街頭の看板に「Obey(服従せよ)」等の洗脳の文句が浮かび上がるというシーンが大好きで、結構ネタに使ったり(といっても、これが分かる人間は限られるから、近年は特定の1人くらいにしか使ってない(^^;)。観てないのにネタに使ってるというやましさもあったから、今回、新宿でリバイバル上映やっているのを見つけて、嬉々として観に行った。
とはいうものの、1988年時点で観に行かなかったのは、それなりに理由があったはずで(たぶん、最大の理由は、侵略者の造型がホラー映画ぽくみえたせいだと思う)、今回観に行ってハズレだったとしてもしょうがないな、くらいの覚悟はしてたが、幸い面白く見れた。
地球は既に異星人の侵略を受けていて、侵略者は人間に擬態して地球人の中に紛れ込んでいるとともに、街頭の看板やテレビ画面に洗脳の言葉を潜り込ませ、地球人が従順に従うように仕向けていた。しかも、地球人の権力者は彼らと結託して、一般市民を搾取していた。その事実に気付いた人々が、擬態を見破る眼鏡を開発しており、成り行きでその眼鏡を手に入れた主人公が、真実を知って侵略者を倒すために立ち上がる、という話。
身も蓋もないことを言っちゃえば、眼鏡を掛けると見えないものが見えるというワンアイディアだけの映画、という気はする。話の展開はありきたりで突っ込み所だらけだし、映像もかなりチャチ。同時期に撮られた「ニューヨーク1997」や「遊星からの物体X」は、こんなチャチだったかなあ、と思うくらい(記憶に美化が入ってるだろうとは思うが)。面白く見れたと言っても、アイディアの面白さ、話の単純さといった、あくまでもB級SF映画としての面白さ。
ただ、侵略者側に立っている警察が、抵抗者側が隠れ蓑にしていたコミュニティを力づくで押し潰しに来る場面には、権力が牙をむき出しにする恐怖感がよく現れているし、侵略者の洗脳のメッセージは、今の日本で見ていると、まるっきり自民党のそれだったりして、妙にリアリティを感じてしまった。要は、ジョン・カーペンターの立ち位置が反権力的、ということなんだよな(「ニューヨーク1997」からも、それは感じられる)。
ただ、自分が知ってる限りでは、カーペンターはむしろ右寄りな人間だし、蜂起を準備する抵抗者側の姿は、サバイバリストみたいに見える。この映画自体、反権力的と感じられる一方、取りようによっては陰謀論の映画とも思えるわけで、エンタテインメント映画から単純に思想的なものを汲み取ろうとすることの危険も、感じないわけにはいかなかった。
カーペンター自身も、この映画は1980年代のアメリカの状況にリアクションしたもので、普遍的な社会批判の映画ではない、というようなことを言っているらしい。
主演のロディ・パイパーはプロレスラー。映画の途中にある無駄に長い(^^;彼の格闘シーンは、プロレス技の応酬で笑った。
(2018.10.7)
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