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感想「泥棒はスプーンを集める」

「泥棒はスプーンを集める」 ローレンス・ブロック 集英社文庫
10年ぶりのバーニイ・ロウデンバーものの翻訳で、これが最終作なんだとか。原著は2013年刊行で、こちらの刊行自体が、前作から10年近い間隔が空いていた。

久しぶりの作品だけれど、ブランクを感じさせない、以前のままのたのしさ。もちろん、こっちも久々に読んだから、以前とは細かい所が変わっていても気付かなのいかもしれないけれど、たのしめているんだから、別に問題はない。
中心になる事件のネタは、ある程度勘のいい人なら結構気付きそうに思えるが、雑談の山に埋もれているので、自分のようにボーッと読んでると読み流してしまう。でも、このシリーズの面白さは、事件の謎解きそのものよりも、それをきっかけにした雑談の方だと思うので、それでいいかと。
87分署やネロ・ウルフへの言及がたのしい。古書店を営むバーニイが、紙の書籍への愛着を語る部分も含め、この本が、そういう感情を共有出来る特定のクラスタに向けて書かれていることがはっきり分かる。彼自身がそういうクラスタ内の人間なのかどうかは分からないが、ミステリのオールドファンのことをよくわかっていて、そうした読者層を想定した小説を意識的に書ける作家なのは確かで、今では貴重な存在じゃないのかな。そういう面ばかりが目立つようだと、それはそれでいやらしいのだけど、さすがにブロックは、娯楽小説としてきっちり仕上げていて、そんなヘマはしていない。昔馴染み、という気安さもあるし。

攻めた所がほとんどない、手慣れた感じの小説とはいえ、これだけ面白いものが書けるのは、彼の作家としての技量がまだ落ちてないということなんだろうな。
(2018.10.18)

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