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感想「サンダルウッドは死の香り」

「サンダルウッドは死の香り」 ジョナサン・ラティマー 論創社
酒飲みの私立探偵ビル・クレインを主人公にしたシリーズの4作目(全5作)。原著は1938年の刊行で、昨年9月に翻訳が出た。

脅迫状を受け取った金持ちを守るために、雇われたクレインと仲間の私立探偵たちが、フロリダで酒を飲みまくり、美女と戯れ、海で遊んだりしながら、事件の真相を追及していく話。
不可能犯罪的な興味で引っ張る内容で、ミステリらしさはかなり濃く、プロットも結構しっかりしている。主人公たちは、最初の方で自分から(多分、半分くらいは洒落だけど)宣言している通り、仕事と遊びを合体させるというスタイルなので、遊びまくっているようでも、調査はきっちりやっている。脱線の連続のようでいて、ストーリーも案外まっすぐつながっている。
ただ、読者にもよるだろうけれど、自分にとっては、事件の謎解きそのものよりも、主人公たちが軽口を飛ばしながら、享楽的に事件を追いかけていく過程の方に面白さを感じた。事件の真相は終盤の少し前でクレインによって解き明かされてしまい、その後に最大の見せ場の派手な立ち回りがある、という構成を見ても、著者の意図としても、そっちの方に比重があるのかなと。とはいえ、手がかりの提示や謎解きのプロセスで、著者は手を抜いていないが。
そのあたりが、本書の解説のように、本格ミステリの側からこの著者の作品が論じられる所以なんだろう、という気がする。ただ、実はそこが、近年ずっと、自分がモヤモヤしている所で、そこそこ謎解き要素がしっかりしているというだけで、その作品の方向性も考えずに、安直に本格ミステリの観点から語ろうとする向きがいる、と感じていて、なんかイヤ、と思っている。これは、瀬戸川猛資が遺した悪い流儀じゃないかと。まあ、あの当時は、そういう話でもしないと、本格ミステリの新しいネタが乏しかったから、そういう強引さにも必然性があったし、新鮮な感じだった。でも今は、いろんな状況が大きく変わっているから、そんな必要はないと思うし、何でわざわざそんな切り口で語る?、という鬱陶しさが先に立つ。
もっとも、本書などは、そういう観点で語れるから翻訳紹介してもらえた、という面もありそうなので、難しいところではある。
それと、今回の解説を読んで、ラティマーは、ライスやスタウト、E・S・ガードナーあたりの、本格とかハードボイルドとかいうジャンル意識があまり強くなさそうな作家たちの系譜なんだなということを思った。だからまあ、違和感のある観点からであっても、論じてもらえれば興味深い発見もあるわけで、一概に否定的に考えることでもないか、とも思う。

それにしても、本書の翻訳は問題が多いのでは、という印象。原文と照らし合わせて読んでるわけではないので、正確にはわからないが、辻褄の合わない所や不適切に感じる注釈が、あちこち目に付いた。もっとも、訳者あとがきを見ると、趣味で?訳していたのを論創社に持ち込んだら、出して貰えることになった、みたいな顛末らしいので、仕方ないかという気もするが。そんなことでもなければ、この時点で出されることもなかった本だろうな、とも思うので。
(2019.1.17)

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