« YBCルヴァン杯第3節 C大阪対名古屋 | トップページ | 「麻雀放浪記2020」 »

「タクシー運転手 約束は海を越えて」

昨年日本で公開された2017年の韓国映画。公開当時、見に行こうかと思ったもののタイミングを逸したが、近場で上映会があるのを見つけたので、行ってみた。

1980年に光州で起きた民主化を求める市民運動を、軍事政権が弾圧して多くの死傷者を出した光州事件を題材としている。韓国政府は、外部に真相を知られないように光州を隔離して事を進めていたが、潜入したドイツ人の記者が映像記録を持ち帰って報道したことで、世界に知られることになった。ここまでは史実のはず。
そして、この記者の潜入と脱出を助けた韓国人のタクシー運転手が居た、という所までは、事実だそうだけれど、潜入から帰還までの一部始終のどこまでが事実でどこからがフィクションなのかはよくわからない。ただ、タクシー運転手の身元は、映画が作られた時点では判明していなかったようだし(映画が韓国国内で大ヒットしたことで、明らかになったらしい)、彼の素性に関わる部分は、ほぼフィクションだろう。
とても心を動かされる映画だったけれど、ポイントが、史実の部分とフィクションの部分の二つあるように思えたので、その境目にはちょっとこだわりたい。

主人公はソウルのタクシー運転手のオヤジ。生活するのに精一杯で社会のことには関心がなく、国のやることは間違いないくらいに思っていて、そういう社会でうまく立ち回ることだけ考えていた。その彼が、光州で起きていることを目の当たりにして、彼らを救える可能性が自分にはあると気付いた時の葛藤と行動のヒロイズムが、フィクションとして、この映画で特に心を打たれた所。
他にも、彼以外の登場人物の、ドイツ人記者や光州の人々についても、いい場面が描かれている。光州のタクシー運転手たちが、光州から脱出しようとする主人公を救いにやってくる所とか。タイトルの「タクシー運転手」は、主人公だけでなくて、暗に彼らも含んでいるんだろう。

史実として心を動かされるのは、民主化を求める動きを弾圧し、その運動への参加者を殺すことも厭わない権力の残虐さと、それに対する光州の人々の抵抗が描かれている部分。
このあたりには、近年の日本での政府への抗議行動と、それらへの権力側の対応がかぶって見えたりもするので。もちろん、東京近辺で、目の前で見たり、実際に体験しているそれは、この映画に描かれている凄まじい風景とは全く違うけれど、映像を通して見る沖縄などの似たような風景は、かなり近付きつつあるように見えるし、現状を無批判に放置していれば、エスカレートして、いずれああいう風になりかねないという危機感もある。

それから、史実とフィクションが入り交じったあたりで感じることは、メディアが報道しないことは世界に伝わらないし、正しい報道をしなければ世論を誤った方向へ導くということで、つまりは正しい報道がどれだけ重要かということ。それから、権力を無批判に信じてしまうのは危険だということ。まあ、ここいらは常日頃、思っていることではあるが。
あとは、その裏返しかもしれないが、事実を知ろうとすることの必要性かな。主人公は、事実を知ったことで、状況に関わらなくてはいけないという意識を持ったし、知って行動したことで、30年後、心安らかで居られたんだろうと思う。
それにしても、韓国であれだけ歴代の権力に対する批判が強いのは、権力が国民を欺くこうした事件が、たった40年前に起きていたというのも大きな理由なんだろうと思う。日本にも1945年まで、多分、これよりもはるかに悪質な国民を欺く権力が存在していたんだが、70年経った今では、そんなのをすっかり忘れちゃって、国に盲従したがるような雰囲気が本当に強い。70年の時間経過は40年に比べれば、確かに長いかもしれないけれど、それだけでもない気がする。歴史に学ばない国民性ということで説明出来ちゃうんだとしたら、本当にやりきれない。

映像の技術という点では、40年近く前の光州の街をよく再現したなあと思った。クレジットがすべてハングルだったので、正確な所はまるで判らないが、おそらくCGを相当使っている。そういうことが出来る時代なんだよね。
(2019.3.17)

|

« YBCルヴァン杯第3節 C大阪対名古屋 | トップページ | 「麻雀放浪記2020」 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« YBCルヴァン杯第3節 C大阪対名古屋 | トップページ | 「麻雀放浪記2020」 »