« 感想「コンビニ人間」 | トップページ | J1リーグ第16節名古屋対清水 »

感想「竜のグリオールに絵を描いた男」

「竜のグリオールに絵を描いた男」 ルーシャス・シェパード 竹書房文庫
2018年に刊行された本。昨年のSFベスト本選びでは、かなり上位に来たらしい。SFとファンタジーの中間くらいの感じがする小説。

スペインあたりの架空の土地を舞台にして、大昔に封印され、生きてはいるが動けなくなった巨大な竜を題材にした中篇連作。竜の身体は半ば地形の一部のようになっているが、思念は周囲の生物に影響を与え続けていて、それによって引き起こされる様々な出来事が語られる。
つまり登場人物の行動は、本人の自発的なものなのか、竜の暗示によるものなのか、区別がつかない。こういう自由意思をテーマした小説(特にSFっぽいやつ)は、割とよくある印象だけれど、巨大な竜という独創的なアイディアがうまく噛み合っている気がする。
ただ、それをより強く感じるのは後半の2篇(「始祖の石」「嘘つきの館」)で、前半の2篇(「竜のグリオールに絵を描いた男」「鱗狩人の美しき娘」)は、どちらかというと、巨大な竜というアイディアを展開した話(身体の構造とか、体内に築かれている生態系などを細かく描いている)と思える。言い方を変えると、竜のアイディアの面白さを素直に感じられるのが前半で、後半はストーリーテリングの方に重みがある小説かな。発表順に並んでいるので、そういう風に作風が変化したということだろうし、分かりやすい変遷ではあると思う。このあと、まだ3作あって、さらに作風が変わっていっているらしいから、興味を引かれるけれど、竹書房は続きを出すのかな。

この作家は新潮文庫から「戦時生活」「ジャガー・ハンター」が刊行された時に読んで、独特な作風に結構感銘を受けた記憶があったので、読んでみる気になった。その期待に応える内容だったと思う。もっとも、当時読んだ内容は、もうほとんど覚えていない。中南米を感じさせる、鮮やかな色彩のイメージと陰鬱なストーリーという組合せは漠然と覚えていて、それは本書にも通じているかも、と思うけれど、自分の実感というより、その時に読んだ、そういう内容の評論を覚えているだけかもしれない。 

|

« 感想「コンビニ人間」 | トップページ | J1リーグ第16節名古屋対清水 »

小説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 感想「コンビニ人間」 | トップページ | J1リーグ第16節名古屋対清水 »